星の墓標 アサールは一人、城壁の外にこびりつくように広がる難民街を歩いていました。彼の書店を空にした書痴の大臣がその輝かしい地位を失って以来、一番の上客をなくした彼は長く店を閉めていました。しかし、いつまでもそうしている訳にもいかず、彼は本を仕入れに来たのでした。
一人でここを歩くのは久しぶりでした。彼が本を仕入れに行くと言えば、アルトは必ず資金とともに誰か護衛を寄越しました。そうしてやって来た護衛には様々な人がいました。初めて出会う人々と会話をし、本でできた彼の象牙の塔から出るのは、アサールにとって心おどる冒険でした。
彼らはどこへ行ってしまったのでしょうか?
あの日、アルトが地位を失ったと聞いてから、アサールは閉めきった暗い店の中で誰かが助けを求めてくるのを待っていました。もしかしたら、あの日アルトに連れられて来たザジイが、本好きのルメラが、アルトの影のように付き従っていたファラジが、もしくはアルト自身が──顔馴染みの店主を頼ってくるかもしれなかったからです。アサールは待ちました。しかし、ぽつぽつと彼らの訃報が届く以外に、彼の戸を叩く者はありませんでした。
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