案外「お前ってさ、手は案外温かいんだよな」
「」
「雪みたいな見た目してるくせに、結構暑がりだし」
「お前の手が冷たいだけで、俺は普通だ」
ゲームに飽きたのかソファの肘掛けから足を投げ出し、半身を横たえだらけた小时が俺の右手を捏ね回しながら要領を得ない話を始めた。
他人に触れられる時は身構えるくせに、自分のペースでべたべたと触れててくるこいつの距離感は未だに読めない。
「ダイブする時何時も思うんだ、溶けちまいそうなのに意外だなって」
「...何が言いたい」
「ん〜なんだろうな…ああそうだ、それでこの前董易が言ってたことを思い出したんだよ。日本じゃあ手が温かい奴は心が冷たいって言うらしいぜ。言い得て妙だなって」
手を離さずに視線をこちらに向けられ、打算のない透き通った黒目と目が合う。
「……」
体表面の温度で人の心の有りように難癖をつけてきた小时の手は、見かけによらず冷たかったと思い返す。
その迷信が真実だとしたら小时は、
「まあでも迷信だよな、陆光はネガティブでそっけないけど、負けず嫌いでガキっぽいとこあるし」
「はぁ…白痴か」
右手を上げると抵抗なく手は離れ、その代わり俺の手に吊られたように小时は上体を起こしに何か言いたげに目を細める。
「陆光は優しいもんな。…すっげぇ分かりにくけど」
…ああ、こいつは狡い奴だ、いつだって俺が躊躇う言葉を然もなく投げつけてくる。
どうしようもなく胸がざわつき、これ以上その目に見つめられたくなくて。小时の頭を掴み元の姿勢に戻す。
「うわっおい何だよ急に」
ざわつきは大きくなるばかりで、紛らわすように前髪を掻き回す。
「おいおい何だ、照れてるのか案外可愛いとこもあるよな」
「ふざけるな、暇なら店の掃除でもしてこい」
「はー、もう少し優しさを前に出してもバチは当たらないと思うぞ。そしたら絶対モテるのに」
「必要ない」
「…たまに、不思議になるんだよ。何でお前、俺に付き合ってくれるんだって、まあ助かってるからいいんだけどな」
頭に置いた手を頬に滑らせる。滑らかで、やはり冷たい。
小时が取り留めもなく話した事は、案外迷信ではないのかもしれない。
本当に呆れるほど白痴だ、
お前の言う優しさも、側に居るのもお前だからだ
どれだけの今を捨てても、その笑顔にみっともなく縋るのはお前だからなんだ程小时。
だから早く俺に救われてくれ。