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    野田佳介

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    野田佳介

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    5

    遠い遠い昔——人間がこの世に生まれた時代まで遡る。
    そのとき、同時に誕生した種族があった。
    天使と悪魔。
    彼らは対照的な姿をしていた。
    天使は光に包まれた神聖な存在であり、悪魔は影に溶けるような恐ろしい姿を持っていた。
    しかし、目的は同じだった。

    人間を護ること。

    天使は人間に加護を与える代わりに寿命を貰った。
    悪魔は人間の願いを叶える代わりに対価を求めた。
    ——だが、その均衡は無知な人間によって崩された。
    「天使は無償で加護をくれるのに、悪魔は対価を要求する」
    「悪魔は人間を利用しているのではないか?」

    そう思い込んだ人間は、悪魔を恐れ、迫害し、排除しようとした。
    見た目の違いも、その偏見を強める要因だった。
    やがて、人間は天使に願った。
    「悪魔を滅ぼしてほしい」と。
    天使たちはそれに応じ、悪魔狩りを始めた。
    逆上した悪魔は、自らを滅ぼそうとする人間を喰らい始めた。
    こうして、果てのない戦争が幕を開けた——

    時は流れ、人間は天使も悪魔も見ることができなくなった。
    歴史から彼らの記録は消え、ただの空想上の存在として語られるだけになった。
    だが、戦争はまだ終わっていない。
    人知れず、天使は悪魔を狩り、悪魔は人間を喰らい続けていた。
    ——そんな戦争を、たった一人の”無機物”が止めようとしていた。

    天使でも悪魔でも、ましてや人間でもない存在。
    球体関節人形の体に魂を宿した者。
    その名は——garbage。
    彼は、悪魔である相棒・ヒトツメと共に、この馬鹿げた戦争に終止符を打とうとしていた。

    「人間も、天使も、悪魔も……みんな、バカみたいに戦争を続けてる」
    「俺はこんなくだらない争いに興味はない。ただ——終わらせる」

    garbageは感情の薄い声でそう言った。

    彼は生きていない。
    心音も、体温もない。
    けれど、その無機質な体で、確かに世界を変えようとしていた。

    天使と悪魔の戦争を終わらせるために。
    ヒトツメと共に、彼は影の中を歩み続ける——

    これは、“無機物”が歴史に介入しようとした物語。
    天使と悪魔が果てしなく続ける戦争を、終わらせようとした存在の話——。
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