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    野田佳介

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    野田佳介

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    11

    人間界に戻ったヒトツメとgarbageは、しばらくの間、以前と同じように過ごしていた。
    しかし、その日常の中で、garbageはひとつの疑問に囚われていた。

    自分の体は、一体どこまでが許容範囲なのか。
    そもそも、“死”という概念は、自分に存在するのか。

    それを確かめるために、garbageは自身の体の解析を始めた。
    分かったことは、いくつかある。
    出せる触手の本数は3本まで。
    食事と体内の水分を絶やさないようにしなければならない。
    体があまり破損すると動けなくなる。
    しかしなぜかゴミ箱の中にいると、壊れた体は回復する。

    その中で最も重要な発見は——

    触手は切られても問題ないが、根元から引っこ抜かれると地獄のような痛みが走る ということだった。

    garbageは、興味本位で自分の触手を2本抜いてみた。
    その瞬間

    「……ッ、あああああああッ!!!」

    鋭い叫びが部屋に響く。
    無機物のはずの体に、理解できないほどの激痛が駆け巡る。
    思考が吹き飛ぶような痛み。
    体が震え、視界が揺らぐ。

    「クソッ……っ……」

    転げ回る。
    苦しみに喘ぎながら、ただただ耐える。
    2本でこの痛みなら、全部抜いたら死ぬんじゃないか?
    garbageは、ぼんやりとそんなことを考えていた。
    本来なら、こんなことで死ぬことはないはず。
    だが、これはおそらくニホの言っていた「寄生」の影響なのだろう、と朦朧とした意識の中で推測する。


    「お前なぁ……!」

    駆け寄ってきたヒトツメは、garbageの体を支えながら、怒ったように言った。

    「なんでそんな無茶をするんだよ!」
    「……知りたかっただけだ」

    garbageは見上げながら答える。

    「この体がどこまで耐えられるのか、何ができるのか……それが分からないと、戦えない」
    「戦うためじゃなくても、俺は……ただ、俺自身のことを知らないままなのが、嫌なんだよ」

    ヒトツメは、黙ってgarbageを見つめた。
    ため息をついて、ゆっくりと言った。

    「……せめて、俺の前でやれ」
    「……は?」
    「1人で勝手に無茶するなって言ってんだよ」

    ヒトツメは眉をひそめたまま、garbageの腕をぐいと引く。

    「お前がぶっ倒れたら、誰が助けると思ってんだ」

    garbageは一瞬、目を瞬かせた。
    そして、少しだけ、笑った。

    「……分かったよ」



    garbageは、自身の体への理解度を深めるにつれ、ヒトツメを襲おうとする天使たちを確実に返り討ちにするようになっていた。
    最初は試行錯誤だったが、今ではもう手慣れたものだ。
    触手を的確に操り、天使たちの弱点を突く。
    無機物である自身の特性を活かし、時には囮になり、時には影に潜む。
    戦うことに関しては、もう何も不安はなかった。
    だが、戦争を終わらせる手がかりは一向に見つからない。

    もちろん、忘れていたわけではない。
    しかし、何の糸口もなく、考えるたびに絶望的な気分になる。

    「無理に止めなくてもいいんだよ」

    ヒトツメはそう言った。

    だが、それでは意味がない。
    人間界にいる限り、常に天使の襲撃を警戒しながら生きなければならない。
    こんな状態が続けば、いずれ自分たちも消耗する。
    けれど、自分たち2人に何ができる?

    答えの出ない問いに、garbageは頭を抱え続けた。
    そうして、また月日が流れる。


    その日、ヒトツメは突然、garbageの頭に何かを被せた。
    小さなゴミ箱の青い蓋。

    「……なんだこれ」

    妙に頭に馴染む。
    garbageは不思議そうに目を瞬かせる。
    すると、ヒトツメが微笑んで言った。

    「今日、5月3日をお前の誕生日にする」
    「名前にちなんで、な」
    「それが誕生日プレゼントだよ」

    garbageは呆気に取られた。
    無機物である自分に、誕生日?
    そんなもの、考えたこともなかった。
    生まれた瞬間の記憶ももうあまりない。
    そもそも、自分が「生まれた」と言えるのかすら分からなかった。
    けれど——

    「……悪くないな」

    garbageはふっと笑い、素直に言った。

    「ありがとう」

    青い蓋を手で触れながら、少しだけ不思議な気分になる。
    これを被れば、自分が”garbage”であることを実感できるような気がした。
    そんな、穏やかな時間を2人で過ごした。



    その頃、天界では天使の上層部が、何やら不審な動きを見せていた。
    その事実を、garbageはまだ知らない。
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