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    野田佳介

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    野田佳介

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    10
    早くも10いきまして…
    ここまで読んでくれてる人ありがとう
    感想嬉しです

    「いっぱい食えよ。珍しく俺様の奢りだ」

    ヘルメスは笑いながら、テーブルいっぱいに並んだ料理を指した。

    「……じゃあ、遠慮なく」

    garbageは素直に箸を伸ばし、目の前の料理に手をつけ始める。
    魔界の料理…
    それは何とも奇妙な見た目をしていた。
    毒々しい色彩のスープ、未知の生物の足のような揚げ物、
    蠢く生物など…
    見た目だけではなく、味もまた、人間界のものとは全く異なる。

    (……へぇ、こういう味なのか)

    口に合うものもあれば、正直なところ微妙なものもある。
    しかし、それすらもgarbageにとっては興味深かった。

    「……」

    garbageが無言で食べ続ける中、ヘルメスはふとヒトツメに目を向けた。

    「そいつは……」

    言いかけた瞬間、ヒトツメが遮るように答えた。

    「俺が作ったんだ」
    「……そうかよ」

    ヘルメスはそれ以上、何も聞かなかった。
    理由は、分かっていた。
    エミエルの代わりなのだろう、と。
    それが分かっていたからこそ、ヘルメスはあえて口を閉ざした。
    あの時のヒトツメの姿を、思い出す。

    深い絶望の底に沈み、何もかもがどうでもよくなったかのようなあの姿。
    心を閉ざし、ただ虚空を見つめ続けていたあの姿。
    正直、見ていられなかった。
    だが今、目の前にいるヒトツメは違う。
    塞ぎ込むこともなく、普段通りに過ごしている。
    ならば、これはこれでいいのかもしれない、とヘルメスは思った。

    「名前は?」

    ヘルメスはgarbageに尋ねる。

    garbageは手を止め、顔を上げた。

    「garbageだ」

    もぐもぐと咀嚼しながら簡潔に答えると、
    またすぐに視線を料理へ落とし、食べ始めた。

    名前も、見た目も…同じじゃないのか?
    ヘルメスはそう思った。
    だが、詳しいことを聞く前に、ヒトツメが言った。

    「……後で話す」

    その言葉に、ヘルメスはそれ以上何も言わなかった。


    「アデクは元気か?」

    ヒトツメが逆に尋ねると、ヘルメスは少し間を置いた。
    そして、静かに答える。

    「……死んだらしい」

    ヒトツメの目が大きく見開かれる。
    まるで信じられない、とでも言うような顔だった。

    garbageには「アデク」が誰なのか分からない。
    しかしさすがに話題が暗すぎて、一度手を止めた。

    だが、すぐにまた食べだした。

    食器が触れ合う音、周囲のざわめき——
    それだけが店内に響いている。

    「……そうか」

    ようやく、ヒトツメが絞り出した言葉はそれだけだった。

    「アイツはな」

    ヘルメスはヒトツメを見据えながら、静かに続ける。

    「俺と最後に会った時も……お前のこと、ずっと気にかけてたんだぜ」

    ヒトツメは言葉に詰まった。
    ヘルメスの表情を見る限り、冗談ではないのだろう。
    何も言えなかった。
    食事を一通り終えたgarbageが食器を置く。

    気まずい空気が漂ったまま、3人は店を後にした。
    このままじゃ、重苦しすぎる。
    そう思ったgarbageが、ふと提案する。

    「……他のところも、見てみたい」

    少しでも空気を変えたくて、そう言った。
    すると、ヘルメスが一瞬驚いたあと、声を明るくして言う。

    「だったら、俺様が案内してやるよ」

    そうして、3人は歩き出した。


    ヘルメスは、魔界の様々な場所を案内してくれた。

    遊郭、地下街、人間の養殖工場、そして魔界の上層部——
    さすがに重要な機関の中には入れなかったが、
    その建物の役割や歴史について、面白おかしく語ってくれる。
    魔界にはいくつかのエリアがあり、そこにはそれぞれ特性に合った悪魔が住み着いている。
    例えば、体が炎でできた悪魔は溶岩地帯に住み、
    水の魔力を持つ者は深海のような場所で暮らす…など。
    garbageは興味津々だった。
    こういう世界の仕組みを知るのは、何より楽しい。

    「少し、周りを見てきたらどうだ?」

    ふと、ヘルメスが促す。

    「……今度ははぐれないようにな」

    ヒトツメがほんのり睨んでくる。

    「分かったよ」

    garbageは肩をすくめると、その場を離れた。
    garbageが去り、残されたのはヒトツメとヘルメスの2人だけ。

    「……あいつは」

    ヒトツメが口を開く。
    「……もう分かってると思うが、エミエルの代わりとして作ったんだ」

    ヘルメスは少し目を伏せ、「だろうな」と呟く。

    それを聞いたヒトツメは、かすかに笑った。

    「でも、失敗してな……もう、あいつはエミエルじゃない」

    遠くにいるgarbageを眺めながら、静かに続ける。

    「新しい俺の友人……いや、相棒だ」

    ヘルメスはヒトツメの横顔を見つめた。
    かつて、エミエルがいなくなった後のヒトツメは、
    まるで魂を抜かれたような顔をしていた。
    だが今は違う。

    「……まぁ、上手くやれてるなら良かったよ」

    ヘルメスはそれ以上は何も言わず、軽く笑ってみせた。


    「……俺たちは、この戦争を止めようとしてる」

    ヒトツメがそう切り出すと、ヘルメスは短く息を吐いた。

    「分かってるよ。お前が相変わらずの馬鹿なのは」

    少し呆れたような笑み。
    でも、本気なんだろうとも分かっていた、ヒトツメはそういう奴だ。


    一通り案内を終え、そろそろ帰る時間が近づいてきた。

    「そろそろ帰るか」

    ヒトツメが言うと、ヘルメスもgarbageも、どこか名残惜しそうだった。

    「ずっとここにいればいいのに」

    ヘルメスが冗談めかして言う。
    garbageも「ずっと」というわけではないが、
    まだ見たいものがたくさんあった。
    しかし、目的は果たした。
    また来る日があるかもしれない。
    駅でヘルメスに別れを告げる2人。

    「また来る」

    garbageがそう約束した。

    それがただの観光になるのか——
    それとも、天使との戦闘のためになるのかは分からない。
    だがそれは黙っておいた。
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