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    野田佳介

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    野田佳介

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    12

    分からないことは自分自身のことだけでは無い。
    ヒトツメの過去、戦争の止め方、自分の過去、自分が住んでいる空間の事すら何も分からない。
    無知は何よりも弱い。
    知識を増やして対処法を考えなければ。

    まずは一つ一つ、全てを把握していく。
    そう思いヒトツメに自身のことやヒトツメのことを聞いたがあまり教えてくれなかった。
    誰にも頼らず独自に探るようになっていた。
    …garbageに自覚は無いが勝手な行動は性格なのか、治らない。

    まずは自分の住んでいる所。
    不可解な点が多すぎる。
    どこまで続いているのか、広さも分からない。
    世界中のどこでも、青いゴミ箱であればアクセス出来るというのがまた奇妙だった。

    部屋という概念が存在しないこの空間では
    自分のスペースだけを仕切りで区切って
    それを"部屋"として暮らしていた。
    それぞれのプライバシーは一応あるようだった。

    garbageは人間ほど家具を必要としない。
    寝ることも無いが最低限の寝床と、小さなテーブルだけ。
    逆にヒトツメの部屋はものが多かった。
    大量の書物、棚と大きな机とよく分からない恐らく魔界の道具たち。

    2人ともお互いの部屋にはあまり入らなかった。
    相棒としての距離感か、信頼か…
    壁もないので呼べば聞こえるし扉もないのですぐ来れる。

    そしてこの空間には電力、水道、ガスなどが無い。
    ガスは簡易コンロで何とかしたし、水分は買って凌いだ。

    そもそもこの空間に窓など無いので昼も夜も分からず常に黒く暗いというのに
    お互いや物体だけはハッキリと見える…不可思議という他なかった。
    つまり電気は必要無かった。

    冷蔵庫など、電力を直接使うものは使えないが、
    ほとんどの食事を生で食べるヒトツメと
    どれほどの量だろうと残さず食べるgarbageにはあまり関係の無い話だった。

    この空間に関してわかることはこれくらいだった。
    勿論ヒトツメすら知らない。

    ある日、garbageはそっとヒトツメの部屋を訪れる。
    あまりこういうことはしたくなかったが、
    何か、いやなんでもいい。
    あの大量の文献の中に自分に少しでも有益な情報は無いかと、そう思ったのだ。

    ヒトツメはかつて記録士をしていたと本人から聞いた。
    名残か、癖か、日記や記録をつけるのは治っていない。
    自分の目が覚めた時から…いや
    あるいは、それ以前から治っていないとしたら。

    自分の生前の状態を知ることが出来るのではないか、
    そこに何か手がかりは無いかと考えた。
    過去を知るのは必ずしもいい事だとは限らない。
    だが何も知らないよりマシだと、この頃のgarbageは本気で思っていた。

    手当り次第ガサガサと漁る…事細かに書かれたこれだけの量の日記を読むのは、かなり時間がかかりそうだ。
    日付や時間が書かれているだけマシだった。

    自分の目が覚めた正確な時期はもう覚えていない。
    だが気になる部分を見つけた。
    ヒトツメにしては珍しく荒れた、書きなぐったような、garbageにも解読出来ない文字。
    普段が綺麗な字である分、かなり目を引く。

    その後は暫く空白の期間があった。
    書き忘れるとは思えない。
    わざと書かなかったのか。
    そしてその後、見つけてしまう。
    設計図……?人形の、人型ロボットのような
    自分と似ているそれはまるで…

    身体が震える。なのに読む手は止まらない。
    性格の反映分析……そして何度も記された"エミエル"という名前。
    これは、これは一体なんだ?
    思考が理解を拒む。
    まるで自分はそれの代わりだと突きつけられているようだ。
    紛れもなく自分ことだと確信した。
    目が覚めた後のことも書かれている。

    「自我が強く…」「これでは再現にならない。」
    「失敗だ。」

    "失敗"
    その言葉があるはずの無い脳内を埋め尽くす。
    感情はぐちゃぐちゃに混ざり、目の前が暗くなる。
    ……その感情すら他者の反映かもしれないと考えると吐き気がする。

    アイツは初めから俺をエミエルという人物の代わりとしか見ていない。
    しかも、日記の内容、目が覚めた直後の自分の姿を照らし合わせると、
    エミエルは天使である可能性が高い。

    全て、全て隠していた。裏切られた気分だ。
    遅れて怒りがやって来る。

    そんな時ヒトツメが帰ってきた。
    自室に立ちつくしていたgarbageを見てかなり動揺したようだった。
    ヒトツメが口を開くより先に胸ぐらを掴む。
    「俺はエミエルの代わりなのか」と聞く声は、その目は
    ヒトツメが今まで見てきた中で間違いなく1番冷たく刺すようだった。
    気圧されてしばらく何も言えなかったせいか、garbageはそれを肯定だと受け取った。
    ……実際間違ってなどいない。

    garbageは冷ややかに笑う。

    「失敗か。じゃあさっさと殺したらどうだ?」

    言葉につまるヒトツメ。
    そんな彼を見て怒鳴るgarbage

    「なんで否定しない?なんで新しい名前を付けた、何故生かしておいた!」

    信じてたのに、と付け加え、背を向けるgarbage。
    謝ることしか出来ない自分を情けなく思った。
    次第に声は震えて、嗚咽が混じる。

    否定したかった。だが出来なかった。できるわけが無かった。
    言い訳しか浮かばず言葉を飲むだけだった。

    それでも、と言いかけた言葉をgarbageが遮る。

    今は何も聞きたくない。と冷たく言い放つ。
    そのままヒトツメの横を通り抜けて部屋へ入っていった。


    部屋に戻ってからもヒトツメの泣き声は止まない。
    それすら聞きたくなくて、寝ることにした。

    garbageの体は睡眠を必要としない。
    暇な夜は、ラジオを小さな音量で聞くだけで
    寝ることなんか滅多になかった。
    寝ると言うよりも、自らの意思で気絶出来る、という状態に近いが、garbageはそのまま意識を手放した。

    せめて寝ている間に殺してくれないだろうか、と思っている部分もあった。しばらく目を覚ますつもりは無かった。
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