それは、まるで呪いのような恋だった。
仕事のあと、彼は誰となにを話しているだろうか。
オレ以外にも、プライベートな笑顔を見せているだろうかと。
一時に気になってしまえば、見えるところにいない時のことを想像して胸を焦がす。
そんな恋愛を、レンはしたことがなかった。
器用に恋情を隠してはいたが、聡いカミュには無駄な努力で。
もの言いたげな視線をよこしながらも、お互いに心地よい距離を保った友人関係を続けていた。
ある日、カミュ宅を訪れてしばらく共に過ごしている時に。
「居心地よすぎて、帰りたくないなぁ」
本音をまじえた冗談で、笑顔を見せたレンを
「お前は、俺を求めているのか?」
唐突に問い詰めた。
逃げ道を作ろうと思いめぐらせても、上手く頭が働かず。
まっすぐ見据えるアイスブルーのまなざしを、誤魔化すことはできなかった。
「バロンを、愛してるよ。でも君には国があるのに…」
恋の伝道師とも思えぬ弱気な発言で、レンが俯く。
「気にするな、時に寄り道も悪くない」
答えを聞いてレンが顔を上げ、そっと自分の唇でカミュの唇をふさいだ。
丁寧にカミュをソファに倒したレンの首に、手を回す。
熱に潤むレンの青い瞳を見つめ返し、カミュが薄く笑った。
『この愛で思い知らせてやる、寄り道にも意味はあると』