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    hiyoshi_TB

    うたプリの腐小説を書いています。
    カミュセシを中心に、色々なCPを書くので。
    キャプションをご覧になってから、閲覧してください。

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    hiyoshi_TB

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    蛇神の捏造過去、続編です。
     誕生日祝い、というには寂しい内容ですが…。
     このあと、猫又と出会う予定です。

    ※先にコチラ(https://poipiku.com/96817/3552354.html)をお読みいただくと、わかりやすいと思います。

    ******

    <ありし日の・弐>都にある晴明の邸宅は、庭が山野のごとき様相で。
     人の訪問も少なく、華やかさや賑やかさとは遠い場所だった。
     ただ式神など、人ならぬものの気配は多く。
     霊気もほどよく漂っており、来て数日で俺は人の形をとれるようになった。
     俺は晴明が作った式神ではないので、なにをするのも自由。
     ここに飽きたら、出ていくのも勝手だと最初に言われた。
     しかし特に出る理由もないので、気が付けば半年ほど滞在している。
     たまにくる訪問客は、ほとんど博雅なので居心地は良い。
     今日も夕暮れに、博雅が酒をさげて晴明の元を訪れた。
     「佳巳由(かみゆ)、元気そうだな」
     門の内で迎えに出ると、博雅が嬉しそうに俺の名を呼ぶ。
     蛇神のまま名はいらぬと言ったのに、それでは不便だからと博雅が勝手につけた。
     「本当に、お前は変わった男だな」
     呆れて返しても、気分を害した風もなく機嫌よく家にあがる。
     酒のはいった瓶子を預かり、屋敷の中へいざなった。
     「今日は濡れ縁ではないのか」
     博雅が呟くと
     「これに目を付ける輩から遠ざけるためさ」
    薄暗い部屋にたたずむ晴明が答える。

     数日前に、ボロ布をきた男が訪ねてきた。
     どこから嗅ぎつけてきたのか、熱心に俺を所望していたが。
     「これは俺のものではないからな、勝手に余所へやれぬのだよ」
     誰のものだと男が言うのを、晴明がのらりくらりとかわして帰した。
     あやかしを欲しがるとは、奇異な者だと男の背中を見送る俺に。
     「万が一俺以外の者に『お前は誰のものだ』と尋ねられたら『源博雅に名付けてもらった』と答えよ」
     晴明は言って、その話は終わったのだった。

     「男のあやかしとはいえ、佳巳由は美しいからな」
     歯の浮くようなことを呟いて、博雅が用意された毛氈に座した。
     俺が二人の間に瓶子を置くと、女の式神…密虫が杯と酒の肴の乗った膳を奥から運んでくる。
     「酌は女がよかろう、奥へ戻るぞ」
     すっと立ち上って去ろうとすると、
     「お前も酒をたしなむのだから、一緒に飲もう」
    博雅が引き留めた。
     晴明を見ると、口元にあるかなきかの笑みをたたえている。
     「そう面倒くさそうな顔をするな」
     言われて、しぶしぶその場に座した。
     博雅から杯を受取ると、晴明が酒をつぐ。
     口に近づけると、その香りだけでも良い酒だとわかった。
     一口含むと、身に英気がみなぎる。
     干した魚を食べたり、杯をかわしながら楽しそうに喋る博雅の顔を見ていた。
     晴明の表情は大きく変わらずとも、いつもより穏やかな空気をまとっている。
     社はなくとも、少しの酒とこの屋敷に漂う霊気で俺の力は保たれていた。

     人とあやかしは、時間の流れが違う。
     そんなことは、遠い昔から知っていたはずだった。
     床に伏した晴明の横に座し、じっと見つめる。
     その時は、近かった。
     「お前は死なないと思っていた」
     俺が言うのを、老いた顏にさらにしわを寄せて晴明が笑う。
     老いてから、晴明はよく笑うようになった。
     「無理を言うな、俺とて人間だ。残念ながらな」
     皮肉った物言いは、昔から変わらない。
     屋敷の庭の草花は半分ちかく枯れ、式神も密虫だけになっていた。
     以前から静かだった邸内は、凍えるような静寂に包まれている。
     「人は、はかないな…。博雅も、すでに逝ってしまった」
     「だからこそ、愛しいのさ」
     ため息をついて頷き、晴明が奥の暗がりを見つめた。
     「密虫」
     呼ばれた密虫が、両手で持てるほどの大きさの細長い桐箱を持ってくる。
     箱を横に置き、密虫が手を貸して晴明が床から身を起こした。
     しわがれた指で箱にかかった紐を解いて開けると、中には厳かな風情の短剣が収められている。
     「俺が死ねば、お前を狙うものも出てこよう。博雅が大事にしていたお前を、よからぬ者に渡すわけにはいかぬ」
     言ってから、人差し指と中指を立てた右手を口元に持っていき低く呪を唱えた。
     そして短剣を右手で撫でると、その刀身が鈍く光る。
     「これを携えて、東へゆけ」
     錦で包んだ短剣を箱から出して、俺に差し出した。
     「しかし…」
     「密虫たちと同じくらい、お前を気に入ってたということさ」
     大きく息をして、包みを俺の腕に抱えさせる。
     戸惑いながらも受け取ると、ひとつ咳をして晴明は再び横になった。
     この男は、こんなに情が深かったのか。
     じんわりと、喉の奥があたたかくなるような気がした。
     「俺の命がついえるまで、あと三日ほど。それまでに、京を出よ佳巳由」
     命じられて気づく、俺は今まで晴明に名を呼ばれたことがなかった。
     『名は心を、存在を縛るからな』
     何かの折に、博雅に言っていた言葉を思い出す。
     「わかった」
     返事をすると決意が伝わったのか、晴明が安堵の表情になった。
     短剣の入った錦の包みを懐に入れ、密虫に
     「あとは、任せたぞ」
    告げて立ち上る。
     「また会おう、晴明」
     俺の言葉に、晴明は目を見開いてから満足そうに微笑んだ。
     屋敷を出て庭を横切り、門の前で止まる。
     一歩踏み出す時、思わず懐を右手で押さえた。
     しばらく歩いてから振り返り、屋敷に向けて頭を下げる。
     俺は、この屋敷に名を置いていくことにした。
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    hiyoshi_TB

    DOODLEアンケで同列二位のカミュレン・リクエスト。
    【「ずっと子供でいたかった」で始まり、「浅はかな考えでした」で終わる物語を書いてほしいです。できれば7ツイート(980字)以上でお願いします。】
    文字数少ないですが、二位なので大目にみてくださいw
    ずっと子供でいたかったなどと、レンは思ったことがない。
     子供の頃はちやほやされても、自分の家や外見を見ている者ばかりだった。
     どうしようもなく、常に愛に飢えていた。
     最後まで自分を見てくれなかった父親を、恨むことはなかったが。
     叶わなかった空虚は、今でも心のすみに残っていた。
     家族で楽しむ行事が近づくと、自分がいかに一般的な家庭で育たなかったかを実感する。
     それでも、今は一緒に過ごしてくれる仲間がいる。
     大人ぶって尖っていた頃から、変わらず近くに居た。
     たくさん知らなかったことを教えてくれ、一緒に笑いあう仲間で友達。
     笑おうと思わなくても、レンは笑顔をみえせるようになっていた。
     そして…
     「そろそろ起きろ」
    優しく起こしてくれる、美しく気高い恋人。 
     あたたかいベッドで、レンがゆっくり目をあけた。
     隣でカミュが、ふとんから上半身を起こしてレンの髪をなでている。
     レンはちらと視線を時計にやると、再び目を閉じた。
     「まだ大丈夫だよ」
     言いながらすり寄ると、カミュがふっと笑って鼻先にキスをする。
     あまりに幸せで、レンの閉じた瞳が熱くなる。
     『ハッピーでも、 574

    hiyoshi_TB

    DOODLEアンケで一位だった『カミュセシ』です。

    【「私は晴れの日が嫌いだった」で始まり、「明日はきっと優しくなれる」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば13ツイート(1820字)以内でお願いします。】
    とのことでしたが、最初の書き出しだけセシルの口調に変えています。
    「ワタシ、晴れの日が嫌いでした」
     共に住んでいる部屋でソファに並び、くつろぎながらテレビを見ていた時にセシルが言った。
     ニュース画面には、今年成人を迎える若者たちの希望に満ちた様子が映し出されている。
     不思議に思いつつ、カミュがセシルを無言で見つめて続きを促した。
     「アグナパレスでは、ワタシの誕生日は三日前から祝いの行事が始まります。でも小さい頃は晴れの日だからと、知らない人たちが次々に会いに来るのが窮屈で…」
     いつも宮殿内で自由にすごしていた小さなセシルは、祝賀用の動きにくい服がキライだったし。
     外部の人間が入ってくる時期は、行動も制限された。
     王と王妃たる両親は、招待客からの挨拶に応じていて不在。
     いつもの倍以上の側使いに取り囲まれ、母の膝に甘えに行くことすらできなかった。
     当時を思い出したのか、セシルが横にあったクッションを抱えてむくれる。
     「贅沢な悩みだな」
     ため息と共にカミュが言うと
     「子供だったのです」
    言い訳をするセシルに、カミュが遠くを見つめて口にした。
     「俺は子供のころから、騎士だったからな」
     その一言で、背景を察したセシルが息をのむ。
      825

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