1月10日。玲音は一つの紙袋を下げて家を出た。
誕生日だからと代わりを申し出たが「先輩と一緒にバイトしたいっす」と言われれば玲音に断れるはずもなく。つい思い出して頬と耳を染めながらグラスを磨きなおす。
ふと玲音がホールの方を見ると、蒼斗が接客をしながら周りの常連たちに祝われており、可愛がられている姿に笑みがこぼれる。高校で同年代といるとしっかりしているのもあり、大人っぽく見える蒼斗だが、こうやって年が離れた大人たちに囲まれているとまだ16歳になりたての高校生である。
玲音が穏やかな表情をして眺めていると、不意に蒼斗と目が合う。蒼斗は玲音に見られていたことに気付き、少し視線を迷わせた後にはにかんだ。
そんな顔に玲音がドキッとしている間に、蒼斗が崇に何かを伝えられたのか玲音の方に近づく。
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