Dress Up Mee !「君はこの服とこの服、どちらの方が俺に似合うと思うか?」
黒い礼服とグレーのそれを両手にぶら下げて、アルハイゼンはソファーに座ってぼんやりとしていたカーヴェに尋ねる。
ある晴れた休日の昼下がりの事だった。
「ええと、僕だったら黒を選ぶな。というか、そのタキシード、この前のパーティの前に君に聞かれて僕が選んだ奴だろ。結局あの時は仕立てが間に合わなくて、そっちのグレーのを着ることになったけれど。……礼服、暫くは使う行事もないからって仕舞ったんじゃないのか?」
束の間思案して意見を述べた後、カーヴェは疑問に首を傾げる。教令院で毎年行われるプロムパーティーの式典やら、フォンティーヌの科学院と合同で行われるシンポジウムは既に終わっていて、礼服を使うような機会は今年はもう無かった筈だ。
5825