昨日は、今までと何も変わらない日だったはずだ。
学校へ行って、勉強をして、幼馴染や友人たちと話したり、遊んだり…。
他の同世代の子と、なんら変わりのない日常。
──そんな日常が崩れ落ちた、たった一本の電話。
自分の携帯ではなく、家の固定電話にかかってきたそれは、母の死を告げるものだった。
踏切内で動けなくなった人を助けた代わりに、母が列車に轢かれたのだという。
…それなら、母はきっと後悔はしていないのだろうと、そう思った。
母も昔、そうやって命を助けられたらしい。
顔すら覚えていない父親は、そうやって命を落としたのだと、いつか母が教えてくれた。
…またその話を聞ける機会は、もう二度となくなってしまったのだけれど。
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