婚約破棄にグラジオラスの花束を「音乃嬢、君との婚約を破棄させて貰う」
鯉登音乃はたった今、婚約者である皇太子の鈴川に婚約破棄を突きつけられた。アカデミーの卒業パーティーという晴れ舞台にも関わらず、だ。周りの者達も騒つき、収拾がつかない状態になっている。そんな状況でも、音乃は少しも表情を崩すことなく、鈴川と対峙していた。音乃の隣に控えている護衛 兼 従者の月島が人を殺めそうなくらいの殺気を出して、剣に手をかけるが、音乃は至極冷静に彼を制する。
音乃は美しいながらも、どこか近寄りがたい雰囲気を持っており、氷の女王と呼ばれている。その絶対零度と言われる冷たい視線を鈴川とその隣に寄り添い、勝ち誇った顔をしている熊子に向けた。
目の前の泥棒猫は皇太子を自分のものに出来てご満悦のようだが、音乃にとっては心底どうでも良かった。それは、二つ程理由がある。
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