君が呼んでくれたから国をあげての盛大な結婚式の予定がすすむなか、
身内だけでこじんまりした結婚式もやりたいと
民間の式場のカタログを自宅で2人でながめていた
「どうしたんだ?」
急に目の前のアスランの動きが止まった
「いや、ここ」
アスランの指先を見ると、チャペルにあるオルガンの写真があった。
「アスラン弾きたいのか?」
「いや、俺には音楽の素質は無いよ」
「じゃあ呼びたいのか?」
「そうじゃなくて、いやそうなんだけど……」
煮え切らない態度のアスランに、何で二の足を踏んでいるのかわからないが願いは全部かなえてやりたかった。
「遠慮するな、せっかくの晴れ舞台だ。どんなピアニストでも呼んでやる、誰だ?」
「ごめん、カガリ。そうじゃないんだ。どんなにお金を積んでもどんなに権力があっても呼べない」
申し訳なさそうなアスランに対し、1つ心当たりが浮かぶ
「もしかして」
「ああ、ザフトのとき一緒だったニコルってやつがいたんだが、ピアノが得意だったんだ。だから」
━― 生きてたら
「弾いてくれたのかなって」
「弾いてくれるだろ、仲良かったんだろ?」
話をする姿は今まで見たことない顔で、キラとも違う友達なんだろう
「お前、ディアッカとイザークの話をしてるときとと全然違うぞ」
「だったらいいな」
やっと笑顔がもどった。彼はよべないけど、せめて
「じゃあせっかくだからオルガンも置いておこうか」
「ありがとう、カガリ」
やっぱり笑顔がかわいい、叶えてやりたい
久しぶりに浴びるオーブの夏の日差し
親しいものだけでの小さな式だと言われていたが、ザフトからアークエンジェルクルーから多く参列者の姿にシンは、どこが小さいんだよと誰に聞かせることもなく呟いた
オーブのお姫様の白いドレス姿はきっと今までで一番綺麗なんだろうし、
何を着ても様になるような元上司は見たこともないくらいに幸せそうな顔をしていて、今日ぐらいは祝ってやろうとシンは思った。
フラワーシャワーのあとガーデンでまったりと歓談がおこなわれていた。そのとき
誰もいないはずのチャペルから音がきこえた
「この曲は」
「あぁ」
アスラン、そしてイザークとディアッカがすぐにチャペルに向かう
そのあとをカガリがミリアリアの手を借り追いかけた。
誰も座っていないオルガンに鍵盤だけがうごいていた。
もしかしてという気持ちがアスランイザークディアッカにうかぶ
そんなとき入ってきたシンがアスランの隣にやってきた
「あのザフトの制服の人アスランの知り合いなんでしょ。今声がわかるの俺しかいないと思うんで、頼まれたし、ちゃんときいてくださいね」
『アスラン久しぶり。ぼくのピアノが聴きたいって言ってくれてびっくりしました
こんどはちゃんと最後まできいてね』
シンの声でニコルの口調で話すのは少し不思議な感じがするがニコルのことばがきけて嬉しかった
音はやまない、これでバージンロードを歩きたかったな。あのときカガリに言えなかった願い。
するととなりにウエディングドレスのカガリがやってきてアスランの手を握った。
「カガリ……?」
「アスランとならどんな道でも何回でもあるいてやるよ」
「君はほんとうにかっこいいな」
カガリは俺のほしいものをくれる
ニコルのピアノに包まれながら2回目のこの道を
歩く
「カガリありがとう」
音が止む
「アスラン、呼んでくれてありがとう。幸せになってね」
もう聞くことができないはずの声が聞こえた。
顔をあげると思い出のなかにいる姿のままのニコルがそこにいた。
「ああ、ありがとうニコル」
笑顔で答えるアスランに安心したように微笑むと、目の前にいたはずのニコルの姿は見えなくなった
カガリは左手でアスランの手を握り、右手の手袋で目元をぬぐってやった
「シンもありがとう」
アスランの言葉にシンは
「あの人の言葉伝えられるの俺しかいませんからね
今日はあんたを祝ってやるって決めてたし」
後半の言葉は少し恥ずかしくて小声になってしまったが耳がいいのだろうアスランは笑っていた
願った。