「幸せの泥濘」第三話セルはダイニングテーブルについて、料理をしている女の後ろ姿を眺めていた。「女」という生き物とこれほど長く一緒にいたのは初めてで、女の後ろ姿を見てはその曲線美を感じた。丸みを帯びた肩、むちりと背中にはみ出した肉、柔らかそうな尻、肉付きの良い太もも。決してスタイルがいいわけではないが、男受けする肉体だとセルは思った。
「さっきからこっち見てるの気づいてますよぉ」
「えっ、はっ、え?」
女は後ろを振り返ることもなくそう言った。セルは戸惑い、意味のない音を口から出すことしかできなかった。なんでばれた?キッチンに鏡なんてないはずなのに?ぱくぱくと口を開閉させていると、へらっと笑った女が振り向く。
「やだ、本当に見てたんですか?カマかけただけだったのに」
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