その日はとても寒い日で、昨日の晩からずっと雪が降り続けていた。道路は真っ白に覆われ、空にはうす暗い灰色が広がっている。
その雪の中を、十にも満たないであろう少年-レイン・エイムズは一人、必死に走っていた。寒さで真っ赤になった手には、手当たり次第いろんな薬屋を訪ね回ってようやく譲ってもらった薬が握られている。
雪の中をずっと走っていたせいで靴は水気を帯びて重たくなっていた。足は道中雪で何度も転んだために切り傷だらけになっている。ずっと走り続けていたせいで呼吸は浅くなり、肺は限界を訴えていた。それでもレインは足を止めることは無かった。あの薄暗い家で待っている、世界でたった一人の弟のために。
家に着くと、家人の耳に届かないようにそっと扉を開けて中に入る。以前、音を立ててしまった時に空の酒瓶で殴られたときの痣がまだ腕に残っていた。
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