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    1nu1nu3iko

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    幼少期☔️🐬捏造。🐬が風邪をひく話。若干の虐待描写あり。この垢に再掲します

    その日はとても寒い日で、昨日の晩からずっと雪が降り続けていた。道路は真っ白に覆われ、空にはうす暗い灰色が広がっている。
    その雪の中を、十にも満たないであろう少年-レイン・エイムズは一人、必死に走っていた。寒さで真っ赤になった手には、手当たり次第いろんな薬屋を訪ね回ってようやく譲ってもらった薬が握られている。
    雪の中をずっと走っていたせいで靴は水気を帯びて重たくなっていた。足は道中雪で何度も転んだために切り傷だらけになっている。ずっと走り続けていたせいで呼吸は浅くなり、肺は限界を訴えていた。それでもレインは足を止めることは無かった。あの薄暗い家で待っている、世界でたった一人の弟のために。

    家に着くと、家人の耳に届かないようにそっと扉を開けて中に入る。以前、音を立ててしまった時に空の酒瓶で殴られたときの痣がまだ腕に残っていた。
    二人は今までいろんな家をたらいまわしにされてきたが、今回預けられた家はその中でも一番最悪だった。家主は兄弟を毛嫌いしており、食事は朝と晩に小さなパンが1個だけ、寝床は地下の物置部屋に汚れた毛布が一枚置いてあるだけ。何か気に入らないことがあればすぐ兄弟を殴ろうとし、そのせいで生傷が絶えなかった。

    階段を音が鳴らないようそっと降りて、二人の寝床である部屋に戻る。そこには、朝から熱を出してぐったりしているフィンが毛布にくるまって眠っていた。その表情は苦しそうで、顔は真っ赤になっており額には汗が滲んでいた。

    「フィン。フィン、起きろ」
    優しく肩を叩くと、フィンの目がゆっくりと開かれた。
    「...兄様?」
    「薬をもらってきた。飲めそうか?体起こすぞ」
    「うん...」
    レインはフィンの背中に腕を回し、起き上がろうとするのを手伝ってやった。
    「口、開けろ」
    んあ、とフィンが口を開ける。レインはその中に先ほどもらった薬を入れて、コップに入れた水で飲ませてやった。ごくん、と薬を飲み込んだ音を確認したら、再び毛布をかけて寝かせてやり、こっそり洗濯場からくすねてきたタオルを濡らしてフィンの額にのせてやる。
    「兄さま、ごめんね...僕のせいで...」
    「...いいからもう寝ろ。寝ないとよくなんねぇだろ」
    「うん...あ、兄さま」
    「何だ」
    「兄さまの手、真っ赤...」
    フィンは自分のお腹を優しく撫でていた兄の手を見て、その上に小さな手を乗せた。
    「兄さまの手、冷たいね」
    「気にすんな。いいからもう」
    「だめだよ...」
    フィンはレインの手をそっと持って顔の近くに持っていき、その両手で優しく包み込んではあ、と息をふきかけた。
    「こうしたら、あったかくなるでしょ」
    「フィン...」
    握りしめられた手から、弟の高い体温がじんわりと伝わってくる。それは、先程まで弟を助けねば、と張り詰めていた緊張を優しく溶かしていった。レインはその陽だまりのような温もりに、不覚にも涙が溢れそうになったのをこらえた。
    「あぁ、そうだな…ありがとう、フィン」
    そう言うとフィンは嬉しそうににっこり笑った。レインの表情もそれにつられて微かに緩んだ。
    「えへへ...」
    「さ、もう寝ろ。」
    「うん...ねぇ、兄さま。僕が寝てる間、ずっとこうしてぎゅってしててもいい?」
    「あぁ…いいぞ」
    握りやすいようレインは握りしめられた手をフィンの胸にそっと置く。しばらくすると、すぅすぅという弟の寝息が聞こえてきた。
    胸に置いた手からとくん、とくんという弟の心臓の拍動が伝わってくる。その音に、まるで母に抱かれたような安心を覚えてレインも眠りに落ちた。
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