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    プチで本にする予定のもの
    冒頭のサンプル上げます〜!

    気が早すぎるんですが、自分の尻叩いておかんとね!!

    喰えないやつとマッチング!!事の発端は一週間前。
    あまり特定の恋人を持たずにフラフラとしていた黒尾は、気まぐれに新しいマッチングアプリを登録した。
    マッチングアプリの広告はSNSでも頻繁に見かけることが多いが、黒尾が登録したアプリは広告の類では全く見たことのないアプリだった。
    登録して気がついたがどうやらゲイ専用のマッチングアプリで、マッチングを試みれば携帯電話の画面を何回スクロールしても紹介されるのは男ばかりだった。
    ジェンダーレスだの性に関することが話題を呼ぶ時代になっても、ゲイ専門となればやはり大々的に広告を打ち出すことはできないのかと呑気なことを考えながら、試しにとばかりにアプリを眺めた。
    ノーマルだとか、ゲイだとか、バイだとか、自分がどれに当てはまると考えた行動したことはなかったが、別にいいかという気軽な心持ちだったのは確かかもしれない。
    フラフラと恋人も作らないでその場限りの関係、こだわりがないからこそ女性が好きだったし、当然のようにこれまでは女としか寝たことはないが、所謂セフレやその場限りの関係なら、最早性別なんて関係ない気もする。
    ゲイは男性側つまりタチが少ないと聞いたこともあるし、男なら妊娠やら身体的な面倒ごとも少ない。
    女っぽい男でも探してみるか?という最低な思想と気軽な好奇心が黒尾の手を動かしていた。
    最初の選別材料となるのは顔写真と簡単なプロフィール。
    今の時代、加工写真や嘘のプロフィールなんて当たり前だから全てを信用することはない。
    ファーストコンタクトでプロフィールに出てきた人物を興味がある、興味がないに振り分けをする仕様になっていたが、全て"興味ない"に振り分ける。
    ゲームの雑魚キャラクターのように次々現れる男を全て"興味ない"に淡々と振り分け…しようとしたところで、黒尾はふと手を止めた。

    「………」

    とても簡素なプロフィールだった。
    その場限りで結構です、と。
    顔もあまりはっきりと写っておらず横顔だけ、その横顔にひどく懐かしさを感じた。
    黒尾は昔よく絡んでいたある人物を思い描くが、似てるだけの全くの別人なんてこともある。
    いやいや、まさかあいつに限って?
    黒尾の好奇心は一気に傾いた。
    その相手を"興味ある"に振り分けして、時間もかからず見事にマッチングした。
    黒尾はその相手にメッセージを送った。

    「まさか、ご本人登場とは思わないデショ」
    「どうした?」
    「いえ、別に…」

    現在、マッチングした相手とホテルのベッドで横並び、黒尾は思わず小さく呟いた。















    見覚えのある人物、それは高校時代に春高で対峙した因縁のライバル校主将、澤村大地だった。
    どんな奴が現れるのか、澤村似の化け物だったらどうしよう、いやある意味では澤村も化け物かもしれないけど…なんて失礼なことを考えながら待ち合わせ十五分前、事前に交換したアプリの連絡先にあともう少しで着きますと律儀に連絡があり、その中に書かれていた特徴のある人物を探す。
    身長176cm、黒髪、黒いシャツとジーパンのものです。
    なんとまぁ特徴のない、なんて思っていたのも束の間。

    「「はぁぁ?」」

    周りに響く大きな声でハモったのが再会の合図となった。

    「帰る…」
    「ちょちょちょ…、待って!待ってって!!!久々に会ったのに、その態度は酷いじゃん」

    食えないタイプというのが第一印象だったか。
    かつて少しだけ憎たらしかった顔がひどく動揺していた。
    疾風のように素早く踵を返した澤村の腕を思わず力強く掴み、澤村は歩みを止める。
    振り返った顔はやはり動揺しており、視線がこちらと重なることはない。

    「痛い…」
    「ごめん」
    「帰る」
    「それはダメ」
    「用事あるのを思い出した」
    「そんな言い訳通じませんけど」

    何をこんなに必死に引き留めてるのだろう。
    目の前にいる澤村が帰ろうとしているのが気に食わないのか、はたまた。

    「こんな再会じゃ素直に喜べないだろ」

    澤村は俯いたまま、弱々しい声で呟いた。
    黒尾は別にゲイではない。
    こっちの事情は置いておくにしても、ネコ希望といえばそれはつまり自分が何者かを晒すと言うことになるのだから、そりゃ突然知り合いが現れたら動揺するのも無理はないが。

    「再会したことは嬉しいと思ってくれてるんですか?」
    「うるさいよ」
    「まぁ…、でもさ」

    黒尾は澤村の掴んだままの手を引き寄せる。
    予期せぬ行動に体制を崩した澤村が黒尾へとよろけたことをいいことに、黒尾は澤村に密着した。

    「お互いヤル気な訳だし」

    耳元に寄って囁くと、髪の毛に邪魔されず丸見えの耳はみるみると赤く染まった。
    澤村の反応を楽しみたいという好奇心が、黒尾の心を揺り動かしているのか。
    ニヤニヤすることは抑えることができなかったが、それに対して澤村も強く振り解くことができなかった。
    黒尾も可愛らしい反応をする澤村に興味津々だった。
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