兄と弟~Halloween~「トリックオアトリート!」
可愛らしい仮装に身を包んだ子供達がハロウィンの常套句を口にした。
その言葉にクロードは、かごから数個クッキーの入った袋を取り出し、彼らに手渡す。
「ハッピーハロウィン」
その言葉に子供達は笑みを零し、バイバイと元気よく手を振りながら去って行った。
その後ろ姿を見送り、見えなくなったところで、ふうと息をつく。
十月三十一日。今日はハロウィンで、クロードはボランティア活動の一環として子供達にお菓子を配り歩いていた。そろそろ、かごの中のお菓子が少なくなってきた。施設に戻って補充をしてこないといけない。そう思った時だった。
「トリックオアトリ~ト~」
「……兄貴」
吸血鬼の仮装をしたメロルドは、子供のように、さあ、どっちだと言わんばかりに待ち構えていた。大の大人が何をやっているのだろう。クロードは兄に冷たい眼差しを送った。
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