今日、久々に休みが取れそうだったからイサミとデートでもしたいなと思い、電話で勇気を出して誘ったんだ。けれど残念なことに、ダイダラメンバーで飲みがあると断られてしまった。更にイサミは虫の居所が悪かったのか、少しだけでも会おうと誘ったが電話を切られてしまった。メッセージも既読が付かず、俺はしょんぼりした。でも……
「あ、来たきた。よっスミス」
そのダイダラメンバーの飲み会に来てくれ、とヒビキから連絡があったのでカッ飛んで行った。あぁ、もちろん人の身のままで。一秒でも早くイサミに会いたい、その一心だった。
「やあヒビキ。イサミは?」
そこ、とヒビキが指を刺した先には、テーブルに突っ伏したイサミがいた。
「……もしかして潰れてる?」
「そうそう。ちなみにあんたが悪いらしいよ」
「Why…………??」
なんのことやらさっぱりだ。でも、電話で機嫌が悪かったことと関係しているのかもしれない。他のダイダラ面子から「頑張れー勇気だ勇気!」なんてヤジを飛ばされながら、恐る恐るイサミに近づいてみる。そっと肩を触ろうとした瞬間、イサミが勢いよく起き上がった。
「わーーっ!?」
「っるせえよ……ばかすみしゅ……ばーか」
悪口のセンスがアルコールで小学生レベルになってしまっているイサミが可愛くて、にやける口元を押さえる。いや、今はそんなことではなくて。驚きと可愛さで固まっている俺に、イサミはあろうことか、だ、抱きついてきた。
「うわき、しやがって。ばか」
「浮気ィ!?!?!?」
「しってんだからな! おれのぬいぐるみ、びるどばーんでつくってたのぉ!」
眉根は寄せているのに目はとろんとしていて、俺の胸をぽこぽこ殴ってくる。あまりにも可愛いイサミに脳の処理が止まっていると、グーで頬を殴られた。痛い、夢ではない。
……あれ、なんでビルドバーンでイサミのぬいぐるみを作ったこと知られているんだ。あの時見られてたのか。それに、浮気という単語。もしかしてぬいぐるみを作ったことが浮気だと?
「おれのこと、きらいに、なったのかよ……ぬいぐるみがいれば、それでいーのかよ」
嫌いになるわけがない。世界で一番好きな人なのに。
しゅん、と今にも泣きそうな顔で見つめてくるイサミの頬を挟む。
「誤解だ、本物のイサミが一番に決まってるだろ!」
「ふふ、そーかよぉ……じゃあいーや、おれもすみすのぬいぐるみ、つくる」
真剣に気持ちを伝えると、イサミは満足したようにふわっと笑う。ぎゅっと胃が掴まれたような衝撃があった。本当に可愛いなあ、イサミの笑顔は。ぬいぐるみなんかじゃこの可愛さは味わえない。あのぬいぐるみは、その、いつでも自室でイサミを感じたくて作っただけなのだ。他意はないぞ。
そのままイサミは俺に抱きつき鼻歌を歌い始めた。すると、周りから拍手が送られてくる。
「いやー大変だったんだよ、隊長にも泣きつく始末だし。ありがとねスミス」
「む……そうだったのか」
「妬くなスミス中尉。こんなに酔った珍しいイサミが見られたことでチャラにしてくれ」
カーネルサタケは目頭をマッサージしながらため息をつく。相当な絡み方をされたようだ。やっぱり羨ましい。
「ていうか、あんた達いつから付き合ってたの? お互い好きなのバレバレだったし隠さなくていいのに」
「あ、いや……その、実は……」
「「「――ハァ!?」」」
「ん〜……? ふんふんふふーん♪」
そう、俺とイサミは付き合っていない。付き合いたい気持ちはありまくるが、あれから何かと距離感が近いイサミにタジタジになってしまい、勇気が出ず気持ちを伝えられないままでいたのだ。だがこれはいい機会だ。明日、絶対に告白する!
しかし、次の日呼び出すと色々と記憶を取り戻したイサミが赤面し逃げ回り、結果ATFを巻き込んだスーパー鬼ごっこが開催されるのは、また別のお話。