その一欠片まで、全部 がらりとその身に纏う空気を変えて愛の言葉を告げてくる鬼太郎に、水木は思わずたじろいだ。
鬼太郎からすれば、引き金を引いたのは水木の方だと言うのに。
何も知らないような顔をする水木の姿を見て、鬼太郎は堪らない気持ちになる。
「頭は打ってません」
「なら、何でいきなり……」
「心の声」
全部、聞こえてました
鬼太郎の言葉に、水木は固まった。
「……は?」
「先程倒した妖の影響なのか……貴方の考えてる事が全部筒抜けだったんです」
嫉妬、してくれたんでしょう?
そう言って、鬼太郎は緩やかに口角を上げた。
こちらを射抜くその瞳の熱に、水木はこの身を跡形も無く焦がされそうな心地がした。
言わないつもりでいた心の奥底にある本音を意図せず暴かれて、水木は逃げ出したくて堪らなかった。
その気持ちに従って水木が立ち上がろうとすると、それを阻むように鬼太郎が強く腕を引いた。
バランスを崩して前のめりに倒れそうになるが、危なげなくしっかりと抱き止められる。
水木を抱き締めたまま、鬼太郎はそっと耳元に唇を寄せた。
「………僕の全部は、貴方の物です」
そして、貴方の全部は僕の物でしょう?
そんな事を言ってくる小さな恋人は、水木の口から答えを聞くまで逃がしてはくれないだろう。
観念したように息をついて、水木は問いかけに答えようと口を開いた。
「……とっくの昔にくれてやったよ」
皮膚の一欠片も残さず、全部な
水木の答えを聞いて、鬼太郎は満足げに笑った。