今度の土曜日類カイ付き合いたて時空
「今度の土曜日、もし良かったらセカイを一緒に見て回らないかい?」
ごく自然な会話の流れで、誘ったつもり、だった
けれど内心は、断られたらどうしようかと不安でいっぱいである
類はにこりと微笑みを張り付けて、ごくごく自然に、誘ってみたつもりだった
それに対してカイトは穏やかに笑いながら、
「ふふ、楽しそうだね。是非一緒に探検したいな」
と一度は類の希望通りに事が運ぼうとしたものの、
「そうだ、せっかくだからミクやえむちゃんたちにも声を掛けようか。きっと楽しんでくれるよ」
と望みとはかけ離れた方向に話が転がっていく
確かに、セカイの探検、と言えば彼女たちは喜んでくれるだろう
が、そうではないのだ
「…一応、デートに誘ったつもり、だったんだけどな」
「…………あっ」
類は苦笑を浮かべながら言いづらそうに真意を伝えれば、カイトはたっぷりと間を空けてようやっと気付いたようで、羞恥にぼっと顔を染め上げた
類もつられて、頬を染める
何分お互いに初めてのお付き合いであったから、誘いをかけるにもそれを理解するにもなかなかスマートにはいかなかった
「えーと、うん。いいよ」
勿論答えはイエスであるが、勘違いしてしまった手前顔の赤みは引かない
けれども類はそのたった一言でぱぁっと表情を綻ばせると、満足げに笑った
「本当かい?約束だよ」
「うん、約束」
初デートだね、と声に出して、自覚してまた二人で頬を染める
セカイでしか存在出来ないカイトと共に出掛けるとなると、必然的にデートコースはワンダーランドのセカイ内に為らざるを得ない
それも二人一緒ならばきっと楽しいものになる、という確信がある
そして、そうか、デートかぁ、と考えたカイトが、「ぁ」と小さく声を漏らすと、類に一つお願いをした
「…もし、出来たらで構わないのだけど」
「?」
「今度類くんのスマホからで良いから、類くんの世界で、類くんが好きな場所を、僕に見せて欲しいなぁ」
おおっぴらに表に出ることは出来ないけれど、好きな人が生きる世界で、好きな人が好きなものを共有出来たら、こんなに嬉しいことはないんじゃないだろうか
言われた類は目を丸くしたが、直ぐに破顔すると
「おや、初デートもまだなのに、もう次の約束かい?」
「うん、駄目かな?」
「駄目だなんて、言うわけないじゃないか」
「「約束だよ」」と声が重なる
けれどとりあえずは今度の土曜日だね、楽しみにしている、と初デートに想いを馳せて、二人で笑いあった