車で片道1時間と少し。
目的地に到着した解放感と吸う空気の新鮮さに身体が軽くなる。
運転席の景山に「お疲れさん」と声を掛け、後部座席に置いた花などの荷物を取り出した。持つよ、という声が聞こえたが聞こえないフリをして長い階段を登る。
景山に案内されながら着いた場所は、多少の雑草は生えているものの、想像よりずっと清潔な状態にされていた。
「お前、結構こまめに来てるんだな」
「そんなに遠いわけでもないし」
「…うーん…?」
どうにも賛同出来なかったが、奴が学生時代パン耳求めて片道30分を歩いていたような男だったことを思い出し、妙に納得してしまった。
懐かしい記憶に思い耽ている自分を気にもせず、景山は徐ろに草むしりを始める。手伝おうとしゃがみ込むと、今度は景山が立ち上がった。
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