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    morizo

    @moriz0918

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    morizo

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    書きたかったとこだけ

    車で片道1時間と少し。
    目的地に到着した解放感と吸う空気の新鮮さに身体が軽くなる。
    運転席の景山に「お疲れさん」と声を掛け、後部座席に置いた花などの荷物を取り出した。持つよ、という声が聞こえたが聞こえないフリをして長い階段を登る。
    景山に案内されながら着いた場所は、多少の雑草は生えているものの、想像よりずっと清潔な状態にされていた。
    「お前、結構こまめに来てるんだな」
    「そんなに遠いわけでもないし」
    「…うーん…?」
    どうにも賛同出来なかったが、奴が学生時代パン耳求めて片道30分を歩いていたような男だったことを思い出し、妙に納得してしまった。
    懐かしい記憶に思い耽ている自分を気にもせず、景山は徐ろに草むしりを始める。手伝おうとしゃがみ込むと、今度は景山が立ち上がった。
    「掃除道具借りてくるの忘れてた。ちょっと行ってくる」
    「それならオレが…」
    「いや、いいよ。草抜いてて」
    押し付けているのか気を遣っているのかどっちなんだとつっこみたくなったが、母と祖父母の前だ、きっと後者だろうと思った。

    生前に会うことが出来なかった景山の家族を前にしていると思うと、和やかだった気分が少し引き締まるような気がした。同期の、友達の家族と言えばその通りではあるが、何しろ自分と景山はただそれだけの関係性ではない。職場では毎日顔を合わせ、プライベートでも殆ど同居のような生活をしているし、何なら同衾するような仲だ。
    お互い昔から抱えていた恋慕をこの歳になって自覚し、打ち明けた。好き合ってこうなっている、歯が浮くような言い方をすれば立派な純愛だ。言いたくないが。罪悪感など今更ないつもりだったが、家族に見られているとなると途端に責任を感じる。

    そうか、一人息子か。大事にされてただろうな。

    「…息子さんをオレにください、とは言いません。…ただ…悲しい時、寂しい時、側にいてやりたいんです。アイツがいつかそっちに行くまでは、ずっと隣にいさせてください」

    勿論返事が返ってくることはない。それでもこうして伝えられてよかったと思えた。絶対に伝えなければならない事だったから。

    「何ブツブツ言ってるんだ」
    振り向くと、水の入った手桶を持った景山が立っていた。
    「お前!いつから…!?」
    「…妙にスッキリした顔してるから綺麗にしてくれたのかと思ったのに、全然変わってないじゃないか」
    「あー、これはだな。お前の恥ずかしいエピソードを是非御家族にも伝えねばと…」
    景山にヤメロと言わんばかりに柄杓で水を掛けられた。
    「冷てえな!悪かったって、今やるから」
    「まったく…」
    先程までの小っ恥ずかしい告白が聞こえていなかったことに安堵し、再び草むしりを始めた。



    「…お前が先に向こう行ったりしたら、とんでもない嘘吐きだからな…」

    此方に背を向けて雑草に手を伸ばす景山の耳元は真っ赤になっていた。

    …お母様に、お祖父様お祖母様。思っていたよりも、僕等は聞こえないフリがヘタクソらしいです。
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    eyeaifukamaki

    PROGRESS愛をみつける
    ②と③の間のノアside
    ノアはみんなが尊敬する系のできる男にしたかったので、完璧な紳士を目指しました。
    ちゃんと伝わってるかな?
    ノアみたいな男との深津さんがめちゃくちゃ愛されるモブ深もちょっといいなと、それを阻止するさぁきた君に頑張ってほしい、結局は沢深ww
    誤字脱字確認用で載せてます
    ここに載せると間違いがわかりやすい
    初めて彼を見たのはインターハイの試合の時だった。日本の高校バスケで日本一の選手がアメリカに行きたがっていると連絡があって、あまり期待はしていなかったが、スカウトマンとして品定めの為に来日した。みんな同じ髪型で誰が誰やらと見極めが難しい中、それでもさすがは名門校。レギュラーを取るだけの選手達はそれなりのプレーをしていた。その中で唯一、目を奪う存在がいた。一番、というわけではない。でも彼の動き一つで周りの選手が光ってくる。的確なパスと、シュート数は少ないが確実に決める正確さに、中からも外からも打てる柔軟さ。でも、目を奪われたのはそこじゃない。人を惹きつける魅力。しなやかな体に汗が光って艶が溢れる。あまり表情を変えないが、だからこそ、一瞬綻ぶ瞬間が堪らない。プレーは派手じゃないのに、目が離せない。気づけば、無我夢中でその子だけを追いかけていた。
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