外では雪が完全に溶けてるころ、L社内で発泡音が鳴り響く
別の部屋から聞こえる話し声は止まず時折怒鳴り声が響く
大きな芋虫を前にイェティは一息つく
休憩中であろう職員が走ってくる足音がする
息を切らせて飛び込んで来たシャクは我先にと芋虫に齧りつく、よほど腹が減ってたのだろう、雑に皮等の硬い部分を剥がしている
(勿体ない…)
話し相手も居ないイェティは小さな芋虫を手に取り観察する
丸く曲げた時に身が良く見える、それを利用して硬い部分を剥がす
綺麗に剥がれた硬い部分を片手に身をシャクに渡す
シャクは流れるように食べた後ハッとイェティを見たが既に1匹の小さな芋虫と剥がした部分を持って廊下から出ていった後だった
部屋の隅で名のない死体を食べてるグソクが物珍しく見てくる、気にせずどの入れ物に芋虫を入れようと迷ってるといつの間にか食べ終えたのかグソクが近づいてくる
(やっぱり顔が多いと食べる時間は短いのか…)
グソクが芋虫を見つめてる
「…珍しい、使う?」
顔も見ずに質問してくる
「使う」
返事は返って来なかったがその代わりに小走りで部屋から出てビニール製の袋を持って部屋に戻ってきた
「これ、銃使う、両腕必要、袋使う、両腕開く」
ビニール袋を受け取る
芋虫を入れようと持つと芋虫から血が出て来る
(血抜き出来て無かったか…)
硬い部分を支えにしたビニール袋を紐代わりに芋虫に巻き付け干すところを探してるとタカアシがやってきた
「ヒュッ…」
おかしな音を出して片腕が落ちる、腕を囮に逃げる本能がまだ残ってるのだろう
「干す場所を探してる」
紐に繋がれた芋虫を見せながら聞く
「あっ…ほ、干す場所ですね、ここなら届かないと思います」
天井近い場所を指差してる
「干して」
「は、はい!」
慌てて紐を持って芋虫を吊るす
「業務連絡が来たのでお先に失礼します」
小走りでタカアシが去っていく
「移動命令…」
グソクも去っていった
銃の手入れをしながら芋虫を見る
(懐かしいな…)
吊るされた芋虫を見たカブトが悲鳴をあげたのはまた別の話