これが運命だと? 人で賑わう市場の中を、子供達が楽し気に笑い合いながら走り回る。
彼らの親と思われる者が、無邪気な子供達に気を付けるよう声を掛けているところを、ファイノンは微笑ましく見つめていた。
「何を見ているのですか?」
実験道具や材料になりそうなものが詰められた袋を両手で抱えながらアナイクスがファイノンの元へ戻ると、彼の視線の先にあるものを見て表情を穏やかにしていた理由を察する。
すぐにアナイクスの方へ視線を戻したファイノンは、師が抱えていた荷物をひょいと持ってしまう。あ、と思った時には彼に次の場所へ行こうと促されてしまっていた。
「そんなに子供が好きでしたか」
「うーん……好き、というか、元気にしている姿が純粋に可愛いなって。それに、先生と僕に子供ができたら、どんな子になるんだろうなって思ったりしちゃってさ」
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