これが運命だと? ② 賢人アナクサゴラスはαである。
今でこそ樹庭の者であれば周知の事実と言われていることでも、彼の儚げな風貌と細身な身体を見てしまえば一目でαと認識するのは難しいだろう。
現にこれまで何度も学者、生徒問わずαやβからの告白を受けては「私はαです」と、現実を突きつけてやっていた。
しかし、稀にそれでも構わないとなかなか引き下がらない者もいる。
アナイクスにとって、ファイノンという生徒はそんな少々しつこい生徒の一人だった。
「僕、先生の事が好きだよ」
「……またそれですか」
その日も、ファイノンがアナイクスに通算十回目の告白をした時だった。
告白をする度に断られているのに、彼はめげずにアナイクスにアプローチをしては想いを伝え続けている。
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