「マスター、ただいま戻りました。」
赤いドレスを纏ったオートマタが、PCに向かって唸るヒトに声をかける。
人間は数秒の間の後に顔を上げ、「私はマスターじゃないんだけどな」と苦笑した。
「初めての余所行きだったろ?どうだったかい。」
ヒトはPCで作業を再開しながらオートマタに聞いた。
「新たなマスターは見つかりませんでした。」
規則的なテンポ感で返答をするオートマタに、楽しかったかどうかの反応を問いたかったヒトは仕方がないかと肩を少しすくめてみせた。
「マスター、少しお伺いしたい事があります。」
幼い外見のオートマタは、直立無表情でヒトに問うた。
「ウェルは前マスターの盟約にて他者の危機を看過することを許されませんが、その他者が自らの意思でその危険を背負う場合、それがその者にとって必要であると判断された時ウェルはどうすれば良いのでしょうか」
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