ビブリオマニアは眠れない七月二十八日の朝、ラギー・ブッチは驚いた。
前日、レオナに指示されたとおり、彼の部屋を訪れたのは午前六時のこと。部活の朝練が始まる午前七時まで十分余裕があるが、あいにくレオナは寝起きが悪い。ベッドから離れてもらうまで、平均三十分は必要だった。それが、なぜか今朝に限ってもう起きている。
ベッドの上に寝転んではいるが、レオナの眼はしっかり開いていた。
「ど、どうしたんスか?」
「寝てない」
「えっ。熱はかります?」
「そういう事じゃねえよ」
レオナはそう言って、そっと手元の本を閉じた。昨日プレゼントされたばかりの本だった。ラギーは合点した。
「徹夜して読むほど面白かったんスか?」
「ああ?」
「いやいや、睨まないでくださいよ、レオナさん~」
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