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    machikan

    @machikan
    二次創作の字書き。

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    machikan

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    ディアキャ2開催おめでとうございます!
    2022年12月リアルイベントでの無配を再録します。イベント名「王子たるもの」の下の句無配「優雅たれ」、ドラコニア優雅チャレンジです。

    #ディアキャ2
    diaca2
    #マレレオ
    maleLeo

    王子たるもの常に優雅たれ 王子たるもの、常に優雅たれ。
     ドラコニア王家の一員として、耳にマンドラゴラが生えるほど言い聞かされてきた言葉だ。
     マンドラゴラは比喩ではない。優雅でない振る舞いをするとマンドラゴラが耳から生えるという呪いが、この世の中には存在する。
     この僕とて幼いころは落ち着きに欠けていたのだ。さりとて幼さを理由に自由にさせては湖が蒸発し、星が落ちてくる。早急なしつけが必要だったろうと僕も理解している。マンドラゴラの叫びにも慣れた。
     さて僕は、この百年で最大の試練に直面していた。
    「そうなんですよ~。大切なスポンサーの方からのご依頼で、なんとか鑑定できないかと。私、優しいのでお断りできなかったんですよね~」
     教室で星の動きを眺めていたら、そこで寮長会議が始まった。参加はやぶさかではない。
     だが、現れた学園長が追加議題を説明するにつれ、嫌な予感が襲ってくる。
     他の寮長たちは、四分の三がうんざりという表情だったから、僕も目立たずにすんだ。問題のそれは、教卓の上に置かれている。
     ドラゴンのキス拓だそうだ。
     ……………。
     僕も何事かと思ったが、世の中には生物に墨や絵の具を塗り、紙に押し付けたものをコレクションする趣味があるのだという。
     様々な拓の収集家であるスポンサーが、ドラゴンのキス拓を入手した。しかし、真贋がわからない。
     ドラゴンの絵や彫刻は珍しくないが、本竜が拓を取らせる状況は貴重を通り越して怪奇である。
     だが一方で、見方を変えれば、すなわちこれはキスマークである。
     おばあさまがもし色移りする性質の口紅を塗り、キスをして跡が残ればキスマークであり、同時にドラゴンのキス拓たりうる。僕もそうだ。人間の姿だろうが、ドラゴンの身体だろうが、キスはキスで、ドラゴンはドラゴンだ。
     ローズハートが生真面目に発言した。
    「プロの魔法鑑定士に依頼すべきでしょう。僕たちも魔力痕を調べることはできますが、まだ学生の身分です。結果に責任を持てない」
    「そうだなあ。うちが世話になっている鑑定士紹介しようか?」
     アジームも同調する。アジーム家の鑑定士なら腕は確かだろう。他の者たちも、異論はないようだった。キングスカラーは会議開始早々から寝ている。
    「それもそうなんですね~」
    「学園長」
    「なんですか、アーシェングロットくん」
    「そんなことは学園長もご承知だったはず。なぜわざわざこの会議を?」
    「鑑定士が病院送りになったからです」
    「はい?」
     全員が学園長を睨んでいる。
    「魔法鑑定士は物に残留した魔力を読み取ります。このキス拓に残った魔力が強すぎて、結果を判定する前に神経をやられてしまうそうなんですよ。つまり、ドラゴンのものである可能性が高い。わが校にはドラゴンの妖精が在籍しているということで、お話があったんです。ついさっき。いや~、今日が寮長会議で、ドラコニアくんも参加していて、ちょうどよかった」
    「つまりアタシたちはおまけってことね。くだらない。で、マレウス、どうなのよ?」
     竜生最大の危機だった。
     結論から言おう。あれは本物の「ドラゴンのキス拓」であり、「僕のキスマーク」だ。
     恋人へのキスを想像し、成層圏を旋回するほど動揺したテンションのまま、そうだ事前に紙で練習をしようと思い至り、結果として五万枚練習したうちの一枚である。最後はさしものドラゴンの皮膚も擦り切れて、赤い痕が紙に残った。それである。処分し損ねたものが流出したのだろう。
    「のだろう」ではなく。いや、………………言えない。
     恋人への情熱に恥じるところはない。練習だって、人に迷惑をかけたわけではない。
     だが、さすがにこの空気の中で事実をありのまま……、そこは誤魔化せばいいのだろうか。
     思わぬ品を目にして動揺してしまったが、僕のものだと言う必要はないはずだ。ドラゴンのキス拓で間違いないと、そう証言すればいい。
     しかし、それではどこの誰ともわからぬ者の手元に、僕のキスの練習拓が残り続けることに……。いっそ、偽物だと言おうか。だが仮にも僕の真心が詰まった一枚を偽物とは言いたくない。
     シェーンハイトの質問から一秒の間に、目まぐるしく思考が回転する。眼が回りそうだ。
    「レオナ、あんた顔に机の痕つくわよ」
    「あ? うっせえな……」
     キングスカラーが不承不承顔を起こす。眠そうに教卓のそれを見て、ぱちりと瞬きした。
    「マレウスの、」
    「キッ、キングスカラー……!」
     優雅の削れた声が出た。キングスカラーならわかってもおかしくない。この男は魔力のにおいに敏感だから、僕の気配を察知できるだろう。何より、見覚えがあるはずだ。
    「えっ、マレウスのなのか?」
     アジームの無邪気な確認が刺さる。全員の視線が微妙に生温い。キングスカラーは眉を吊り上げて訂正した。
    「うるせえ、知らん」
    「その言い方はないでしょ。マレウス、どうなの?」
     キングスカラーは僕からの手紙や、自分の尻やら腹やら肌に残ったその痕を見たことがあるからわかったのだと、説明できない。
     決して恥じることではないが、秘め事たるべきだ。僕たちだけの。
     顔面の皮一枚分を残して全優雅が蒸発するような心地だった。
     開き直ってふんぞり返っているキングスカラーと、無表情のまま一メートル浮いたまま降りられない僕と、早く帰りたい者たちを見下ろしながら、時計の針はちくたく進んでいくのだった。

                                     
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