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    サクラ

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    サクラ

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    ルフトの過去話になります。
    ⚠️注意⚠️
    ・モブドールが少し出ます
    ・一部グロテスクな表現を含みます
    ・動物の虐殺描写があります
    上記が苦手な方は注意、又は閲覧をお控え下さい。

    さそり座と空虚な独白
    ――

    殺した。不思議と何も感じなかった。

    ……そういえば、そうだった。

    ――

    ……あれは、ホイクジョに居た頃の話だったかねぇ。……多分、驚くと思うんだけどさ?当時の俺は比較的大人しくてねぇ、そこまで突出した特徴も無かったのよ。考えらんなくない?……そうでもないか。……ま、でも一つだけ目立つ所があったんだけどさ。
    生まれつき人相の悪い顔付きしてたんだよねぇ。それでいて大人しかったもんだからさ、周りにはそれだけで高圧的に見えてたんだろうねぇ。お陰でハブだとか、暴力とか。そういうのも日常茶飯事でさ。やになっちゃうよねぇ。
    でも一番キツかったのは……ミサンガとか、折り紙とか……見た目に似合わない「好きなこと」を馬鹿にされた事だったんだよねぇ。……君も嫌じゃない?自分の好きな事と自分。関連付けられて馬鹿にされるの。俺は嫌だったな。そんでまぁ、ストレスが溜まってきちゃってさぁ。……へへっ、何せされるがままだったからねぇ。アビリティも無かったからさ。
    何時だったかねぇ。三歳だったのは覚えてんだけど……まあ、ある日の夜……とか言ってみる?……ホイクジョ、ってさ、よく動物飼ってるじゃない。ウサギとか、鶏とか。……魔が差した、っていうかな。その日は散々っぱらしてやられてさぁ、なんて言うか、心身共にボロボロだったんだよねぇ。自分で言うとあれだけどさ……。だから殺した。

    蹴って 殴って 締めて 潰して 殺して 殺して 殺して 殺して 殺して 殴って 抉って 捥いで 殺して 殺して 殺して 殺して 殺して 殺して 殺して 殺して 殺して

    頭に霧がかかったみたいに、痺れたみたいに。只管に衝動のまま殺して、殺して。ふと気付いた時には真っ赤っか。……その時、なんて思ったと思う?正解はねぇ、「血って赤いんだな」。他人事だよねぇ。その時は疲労感と、憂さを晴らした爽快感で一杯だったんだよ。
    あれだけ派手にやったからねぇ、当然気付かれたよ。服も血塗れだったから、誰がやったかなんて一目瞭然!……でも誰にも注意されなかった。昔はなんでだろうなーなんて思ってたけど、今になるとわかるよ。気味悪かったんだろうねぇ。そりゃあ、普通じゃねぇもん。意味も無く動物殺すとか。いやぁ、イカれてるよねぇ。……今の俺も、言えた口じゃねぇけど。
    その日以降、虐めは無くなったよ。代わりに、周りからの非難の目って言うかな、ゴミを見る目?かな。が痛くなってきた。元々居心地悪かったのが、もっと居心地悪くなってさ。ほら、今度はいじめっ子だけじゃなくて、園全体から非難される事になっちゃったから。
    結果、逃げる事にしたんだよねぇ。ニンゲン関係から逃げて、ストレスから逃げて、ドールから逃げて……逃げてばっかし。後悔はしてないけどねぇ。どうなのぉ?とは思うよ?
    宛もなく飛んでさ。まあ、子供の体力だしねぇ、たかが知れてる。だから川を渡ったところの森で一旦降りたんだよ。……閑古鳥の森、だったかな。閑静な森でさ。とりあえず休めるかな、って思ったんだよねぇ。そんで暫く歩いてたら……居たんだよね。……ああ、ユーレイとかじゃないよぉ?ドールよ、ドール。……翼は無かったけどねぇ。少し先に後ろ姿が見えてさぁ。下の方で束ねられた白の長髪に、森を歩くには不向きな下駄。紺色の着物。あと何故かその上から茶色のトレンチコート着てたかねぇ、アイツ…。懐かしいなぁ。恐る恐る近付いてみて、大体あと200m位の距離になった時、アイツから話しかけてきたんだよねぇ。

    「なにしてやがる。餓鬼はとっととけぇんな」

    こっちを目だけで見て睨んで来てさぁ。ありゃドール一体は殺ってるだろ!って思ったもんだよねぇ。

    「……帰るところがない」

    「……チッ………勝手にしろ」

    ……って、言ったっきり、森の奥の方に歩いてっちゃってさぁ。「なんだこの人」って思ったもんだよ、そりゃぁ。でも園飛び出して来ちゃったもんだからさ、他に行く所も無いし。とりあえず着いてったよ。
    アイツの背を追って、どんどん森の奥に進んだ。常緑樹の緑から、陽の光が緩やかに漏れていた。草木の香りや、暖かなそよ風。鳥の囀りに、動物の足音。人工的にはとても表現し難い、自然ならではの景色。園の外なんて、今まで出たこと無かったからさぁ。なんか新鮮だったよねぇ。
    見慣れない風景を見つつ歩く内に、前を歩いていた背中が消えていた。どこ行った?って一瞬だけ焦ったけどさ、答えはすぐ目の前だった。
    一軒のボロ小屋。木製のこじんまりとしたとこだった。結構年季が入っててさ。所々木が劣化してた。手作りみたいだったけど、しっかりしてんの。ゆっくり扉を開けると、中央の囲炉裏に火を焚べるアイツの姿。近くで見て漸くわかったんだけど、結構年寄りだったねぇ。
    俺を見るや否や舌打ち。「なんで来たんだよ」とでも言いたげだったよねぇ。俺は「いや勝手にしろって言ったのはアンタだろ」、って感じだったけど。 でも追い出さなかった辺り、多分アイツも良い人だったんだろうなぁ、なんてねぇ。

    「………名前は?」

    「…ルフト。あんたは?」

    「言う必要ねぇだろ」

    「言えよ」

    「チッ………………」

    「……………サルスだ、分かったら黙れ」

    「……」

    …初対面の会話ねぇ、これで終わり。変な話だよねぇ。……なんて言うか。これ以上会話は要らない、って感じだったなぁ。……まあ、返って俺にとっちゃありがたかったよぉ?正直触れて欲しく無かったしねぇ。……それからよ、アイツ……っつか、ジジイ。ジジイと暮らす事になったの。……そんな長くなかったけどね
    会話っていう会話も特にしてねぇよ。あくまで必要最低限の言葉だけ交わす仲。「あれ買ってこい」だの「これ持ってこい」だの。パシリがメインだったねぇ。でもそれとは別にさ、聞いてもねぇのに口酸っぱく言われた事があってさぁ。……「他人を信じるな」、「自分の身は自分で守れ」、「誰も助けてなんかくれない」……だっけ。耳にタコが出来るってこの事だと思うよ?ほんと、刷り込む様に何度も言ってくんの。……まあ、本当は自分に言い聞かせてたのかもねぇ。頑固ジジイの典型でさぁ、他人の事をまるで信用しない。信用出来ないからって理由で家庭菜園も、家畜飼育も、家造りも自分でやっちゃった様な奴だから、ほんとに筋金入りだと思うよぉ?そんでトマトとかキュウリみたいなさ、動物に食われちゃうから育てられない野菜とかあるじゃない?ああいうのはカコウジョに態々並んで貰いに行ってた位だしねぇ。
    割と穏やかな日々だったよ。ついでに、雑談とかはお互いにしなかったんだけどさ……生きる上で必要な事って言うかな。例えば基本的な掃除洗濯とか、裁縫とか。そういうのは全部叩き込まれてさぁ。……まあ、お陰で役に立ってる訳なんだけどさぁ。……ほんと、なんでここまでしたんだろうねぇ?それは今でもわかんねぇや。
    そんな訳だったから、居心地も悪くはなかったよ。ジジイは殴らないし否定しないし。小言はうるさかったけどねぇ。ホイクジョに比べたら、余っ程良かったかも。
    でもさ、「環境変化」……って、自分が思ってる以上にストレスなの、知ってる?大体この暮らしが始まって一ヶ月少しの頃だったかなぁ。一気にツケが回ってきたんだよねぇ。

    ――

    深夜。気付いたら外に居た。手には血濡れの包丁。サルスの家にあったものだ。ふと下を見遣れば、力無く、惨たらしい姿で倒れた雄鹿。内蔵が溢れ、「赤」が漏れ出し、草花を犯してゆく。……ああ、また。小刻みに体が震える。自分が何をしているのか、何をしたのか。理解を拒んでは噎せ返る。助けを求める様に空を見ると、真上にはさそり座。一等星の輝きが、何だか虚しくて。ゆっくりと後ろを振り返ると、思わず驚いた。

    「……ジジイ」

    腕を組み、見下ろす。何の感情も無い、慣れたはずのその瞳が今は、恐ろしく感じた。また非難されているようで。

    「命を粗末にするんじゃねぇ。このクソガキが。……戻るぞ」

    それだけ言って、スタスタと戻ってしまった。翌日も、特に変わった様子は無い。……三日間位は気まずかったんだけどさぁ、何時からかこっちが勝手に気にするのも馬鹿らしくなってきたんだよねぇ。だから一旦気にしない事にしたよ。……動物は埋めた。アイツらは何も悪くねぇから。悪いのは、俺だけで。

    ――

    それから約一年間はなぁんにも無かった。ほんとにただ毎日過ごすだけ。でもやっぱりさぁ、なんでも終わりって唐突なんだよねぇ。
    ……四歳も後半に差し掛かり、五歳になる数ヶ月前の事。いつも通り、カコウジョへ野菜を貰いに行った帰りだ。大通りを歩いていると、道の端から声が聞こえる。

    「ズビッ……うぇえーん……どこ、ね、どこ…?ぅ…うぅ"……」

    子供の泣き声。声のする方を見てみると、当時の俺と同い年ぐらい……まあ見た目じゃ判別つかねぇし多分なんだけどさ……の子供が泣いている。幸い、まだ日が落ちるまで時間があった。だから、話しかけてみることにした。

    「どうした?」

    「……ん、ぇ、ぁ、とっちゃんと、はぐれちゃって……グズッ……」

    「(とっちゃん……ああ、親鳥か)」

    「……探すの手伝おうか?」

    「!いいの?」

    「うん」

    大通りを歩き、手当り次第道行くドールに声を掛けた。かなり手こずり、結局北通りの方まできて漸く見つける事が出来た。その頃にはもう夕方で、日もすっかり落ちかけていた。

    「……どうしよう……」

    今度は、自分が彷徨う番だった。生活拠点のある閑古鳥の森は南側に位置しており、特段立ち寄る必要も無い北通りには足を踏み入れた事さえ無かった。見知らぬ場所、知らない景色。彷徨う内にも容赦無く日は傾き、それにつれて人足も少なくなっていく。……本当なら、帰巣本能があるからねぇ、多分ある程度知らないところでも帰れると思うんだけどさ…多分、混乱してたから…かねぇ。訳わかんなくなっちゃったのよ。だからただ、歩くしか出来ることが無かった。
    日が完全に落ち、辺りは真っ暗になった。一通りの少ない小道を歩いていたところで、目の前に誰かが来た。ゆっくり、上を見上げた

    「…このクソガキが!どこほっつき歩いてやがんだ!!」

    早歩きで此方に近付き、目前のところで立ち止まると、物凄い剣幕で叱り付ける。
    ……初めてだった。ジジイに、おっさんに、本気で怒られたのは。

    「…っだって、迷ッ…」

    「他人に手ェなんか貸すからだろうが!!」

    ___ぷつり、何かの切れる音がした。

    ……長時間、彷徨い歩いていた事による精神的混乱。不安感。強いストレス、強い自己否定、非難、罵声。頭がごちゃごちゃになって、冷静な思考を欠く。

    「……さい」

    「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!!!!!!!!」

    ……思考が、頭が、視界が、意識が。全て、全てがホワイトアウトする。
    意識が、覚醒する。先ず飛び込んできたのは黄金。目にまで流れ、視界を狭めていた。そのまま目線を下に落とすと、黄金に濡れた服。手。足元には黄金が水溜まりを作っており、じわり、じわりと地を這っている。まさか、まさか。恐る恐るその先を見遣る。
    見慣れた老人だった。黄金が染み込み、所々色の変わった白髪。身体中、至る所に穴が空いており、見る影も無くなった着物、トレンチコート。極めつけは、コアに深々と刺さった「ナイフ」。見慣れた筈の仏頂面は、酷く安らかな顔をしていた。……自分がやった。それを理解するのに、さして時間は要らなかった。でもやっぱり、脳が理解を拒絶する。「こんなのおかしい」「どうして」「なんで」幾ら問うても返事は無い。……そしてまた、意識がホワイトアウトした。

    ――

    数年の月日が経った。……え?あれはどうなったって?……へへっ、わかんだろ?……そっ、俺はぜーんぶ、ぜーんぶ、忘れましたとさ!……また、逃げたんだよ。自分がした事から。だから、俺の覚えていた事は「気付いたら見知らぬ小屋に居た」ってだけ。……ホワイトアウトした所は今も覚えてないんだけどさぁ……多分、あの後アイツを置いて小屋に帰ったんだろうねぇ。そんで寝たら綺麗さっぱり忘れました!みたいな。……馬鹿げてるよな。…………へへっ。
    ……さぁて、俺の昔話はおしまい、おしまい〜。……その後の話は、また今度。

    ……願わくば、誰か俺を止めてくれますように。
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    ――

    殺した。不思議と何も感じなかった。

    ……そういえば、そうだった。

    ――

    ……あれは、ホイクジョに居た頃の話だったかねぇ。……多分、驚くと思うんだけどさ?当時の俺は比較的大人しくてねぇ、そこまで突出した特徴も無かったのよ。考えらんなくない?……そうでもないか。……ま、でも一つだけ目立つ所があったんだけどさ。
    生まれつき人相の悪い顔付きしてたんだよねぇ。それでいて大人しかったもんだからさ、周りにはそれだけで高圧的に見えてたんだろうねぇ。お陰でハブだとか、暴力とか。そういうのも日常茶飯事でさ。やになっちゃうよねぇ。
    でも一番キツかったのは……ミサンガとか、折り紙とか……見た目に似合わない「好きなこと」を馬鹿にされた事だったんだよねぇ。……君も嫌じゃない?自分の好きな事と自分。関連付けられて馬鹿にされるの。俺は嫌だったな。そんでまぁ、ストレスが溜まってきちゃってさぁ。……へへっ、何せされるがままだったからねぇ。アビリティも無かったからさ。
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