年の差お題:年の差
ある程度年齢がいけば年の差はあまり気にならない。事実、簓と左馬刻は一歳差だけど傍から見ているとどちらもバカであまり変わらない。前に直接本人たちに伝えたらえらく怒られたけど。
一郎とは同い年で、左馬刻とは六歳、ああ見えて年長者の簓とは七歳離れているが、ダチなのでやはり年の差はあるにはあるが気にならない。年上組の二人がバカなのも大いにあるだろう。
だからと言って全く年の差を感じないか? と聞かれたらそうでもない。四人でご飯を食べに行けば拙僧と一郎は酒が頼めないし、酷い時には「お子様は」と言われる。しかも何故か拙僧だけに向って。一郎だって同い年なのに解せない。
それからちょっとした傷とか虫刺されとか。今まですぐに綺麗さっぱり治っていたから全くもって気にしていなかったが、アイツらはやたら気にしている。特に簓。蚊に刺されが治らへん、三カ月前の傷がいつまで経っても消えへん、とかなんとか。不摂生じゃねぇの? と言ったら「空却……これが……加齢や」と妙に真剣な顔で。聞いた拙僧がバカだと思った。二日酔いに頭を抱えている左馬刻も同じことを言っていたのでやっぱりアイツらは揃ってバカだ。
それから今なんかもそう。
「水飲む?」
「ほしい……」
「ほな、待っとき」
枕の横に放り棄てられたタオルで額を拭い、視線を簓に移した。ちゃっかり自分だけ衣類を纏い冷蔵庫から水を取り出している。普段は誰よりも体力がない癖にこんな時だけ元気で腹が立つ。
「ほい。腹は……」
「減った」
「いや、ちゃうくて……早めに洗った方がええんちゃうかっていう」
「面倒くせぇ」
大体テメェがゴムつけねぇからだろ。そう文句を言えば「お前が要らん言うたんやろ」と言い返されて黙るしかなかった。まぁ確かにそれでも良いから抱けと言ったのは拙僧だけど。でも別に中に出して良いなんて一言も(多分)言ってないし、当たり前に何度も中に吐き出した簓もどうかと思う。左馬刻にチクってやってもいいが、ついでに拙僧も怒られそうだからやめておいてやるけど。
「もー、ほら。それ飲んだらさっさと洗ってき~」
「カップ麺で妥協してやるよ」
「えっ、あったかな……」
「あーーーー腰痛ぇ!」
「だぁああもう! 分かった、分かったから、さっさと入り!」
そう言って水を奪うとドカドカと台所へ向かって行った。だが拙僧は知ってる。ここの家のカップ麺は全部拙僧が食いつくして在庫がねぇってことを。ついでにゴムでも買ってこいバーカ。
「ってないやんけ! もー! 何系なん!?」
母ちゃんかよ。なんて笑いが込み上げたがここで笑うと負けな気がしてグッと堪える。
「辛いやつと醤油とツナマヨと唐揚げ、あとコーラ」
「食いすぎや!」
「仕方ねぇだろ、どっかの誰かの所為で今から腹くだしてすっからかんになんだからよぉ!」
「うぐぐ、言い返せん……」
「ハッ」
決して深夜に大声でする会話ではないが、ちょっと気分が晴れたから良しとする。
「ほな簓さんがサラッと買うてきてやるから風呂入って待っとき〜! お子ちゃまは外に出られへんしな」
「うるせぇ淫行野郎!」
「声デカッ!」
ほら、こういうやつ。
年上ムーブが無性に腹立つ。そりゃ拙僧はこの時間出歩けないし、例え出歩いたとしてもポリ公がうるさいし、つーか普段なら寝てるし。それもこれも全て簓が原因だというのに「俺のが年上だから」と言われると嫌でも拙僧が年下なのを意識してしまうし、都合良く牽制されているみたいで悔しい。
「……出し過ぎだっての」
内腿を伝う白濁液の量に思わず苦笑する。こんなに出して簓の方こそしこたま食った方が良いんじゃねぇの? 今頃その辺でフラついてたりして。
「まっ、自業自得ってな」
精々最後まで頑張って愛おしいお子ちゃまの為にまた大人ぶったら良い。なんだかんだその滑稽さも悪かねぇって思うからよ。
Fin