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    こず3

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    こず3

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    死にたがりそよみたいなやつです。

    このままがいい「愛音ちゃん……早く刺してよ」
    「えっ……」
     そよりんが手に持っていたのは包丁だった。刃先を自分に向けて構えていた。
    「ちょっと待った、そよりん一旦落ち着こう……?」
    「私が……私が……生きてる価値なんて無いよ」
     涙ぐむそよりん。そんなこと無いよって返そうかと思ったけど、そんなこと言っても意味が無いような気がして飲み込んだ。
    「愛音ちゃんは私に酷いことされて嫌じゃなかったの……?」
    「うーん……まぁそれは嫌だっ……」
    「じゃあ、早く殺してよ」
     嫌だったけど、何も死ぬこと無くない? って思う。
    「祥ちゃんに振られてCRYCHIC出来なくて、MyGOに酷いことして……そんな私がMyGOにいてもいいなんて思えない」
    「じゃあ、MyGO辞めたらいいじゃん」
    「だって……愛音ちゃんが辞めんなよって言うから」
     いや、そこ律儀に守らなくてもと思う。そよりんって変なところ気にするんだよなー……。
    「辞めないでって言ったり、辞めればって言ったり、一体どっちなのよ……」
     そよりんがため息をついた。
    「愛音ちゃんが要らないとは言って無いけど、どうせ伝わってたんでしょう……?」
     正直、そういうところで鋭さ発揮しないで欲しい。
    「そんなこと思われて平気なわけない……あの時は露骨に無視もしたし……本当に要らないのは…………私だから」
    「うーん……平気っていうか慣れてたし……? 誰かに必要とされないの」
     イギリス留学の時に拒絶されたかのような気持ちになった。あの時、誰にも私は必要ないんじゃないかって思った。
    「私が終わらせてあげるって言ったそよりんの幕を私が閉じちゃうのかー」
     そんな風に茶化したらそよりんの平手打ちが飛んでくるかなぁと思ったけど、飛んでこなかった。
    「愛音ちゃんがやらないなら、私が自分で今度こそ終わらせる」
    「いや、じゃあ私が」
     何か某お笑い芸人さんみたいなやり取りになってしまったのはさておき、そよりんの手を解いて自分で包丁を持つとそれを横に退けた。そして、私はそよりんを抱きしめた。
    「ちょっと、急に何なのよ……」
    「そんなに罪悪感感じなくてもいいんだよーって言いたかっただけ」
    「……はぁ!?」
    「私、うみりんよりそよりんのベースの方が好きだし、そよりんはMyGOにいて欲しいかなぁって」
    「うみりんって誰よ……」
    「八幡海鈴ちゃん。りっきーが紹介してくれたベースの子、知らない……?」
    「知らないんだけど……」
    「じゃあ、今度そよりんにも紹介してあげるね。きっとベースのこと話せると思うよ」
    「……今の私に今度なんて無いから」
     まだそよりんは死のうとしてるみたい。
    「本当はそよりん、死ぬのがこわいんでしょう?」
    「そんなこと……」
    「だったら、今日私を家に呼ばないで勝手に死ねばよかったじゃん」
     そう、多分私をわざわざ家に呼んだってことは誰かに止めて欲しかったんだと思う。
    「愛音ちゃんみたいに楽天家で明るく生きられたら、私も良かったのにね」
    「私だって落ち込むことあるのに……!? そのイメージ酷くない……!?」
     そんな風に言ったらそよりんが今日初めて笑った。

     抱きしめているそよりんの気持ちが落ち着くまで頭を撫でていたら、
    「もう少しだけこのままがいいな」
     と呟いていたから、そよりん可愛すぎない……!? って思った。
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