結局のところ、彼もあちら側なのでこの時期になると、とりわけ忙しくなる。
VTuberと呪術師というミスマッチな仕事を兼業しているシュウは、今日も珍しく外出していた。
依頼自体は簡単に終わったものの、ハロウィンが近づくといつもこうだ。あちらとこちらの境が曖昧になりかけるせいで、必ず依頼が頻発する。
朝から呼び出されていて、ようやくの帰り路。
街中から閑静な住宅街を抜けて帰ろうと思った時、それが目に入った。
《やあ!ボクのかわいいコウモリちゃん!》
たまに行く、落ち着いた雰囲気の喫茶店。
くすんだ赤煉瓦の佇まいに似合わず、その窓にどピンクのペンキで書かれたメッセージ。
ハロウィンの演出にしては芸がないから、いたずら書きか個人へのラブレターかな。
あくびを噛み殺しながらそう判断して、シュウは踵横の路地へ足を進めた。
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