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    kiiiiiiiiiini

    @kiiiiiiiiiini

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    kiiiiiiiiiini

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    TRUMPシリーズ繭期パロ。
    タケマイ…?かな。キサキも出演。思いついた書きたいところだけ書きました。
    トランプ→マイキー
    ソフィとアレン兼任→タケミチ
    ウル的な→キサキ
    いずれ本腰入れて書く時はこれとは全く違う設定になると思います。

    繭期パロ タケマイ ごう、という轟音が古城を揺らす。
     上階からは逃げ惑う若き吸血種たちの声が聞こえる。崩れ落ちる瓦礫に、身を焼こうと迫る炎に怒声を上げて、駆け回るその様は目に浮かぶようだった。
     目の前には二人の男。双方このクランの正装である真白い洋装に身を包み、繊細なレースのあしらわれた服の裾を迫る炎から立ち上る煙に揺らしている。
    「頼む、マイキー、オレに……っ」
     恐々とした表情で片方の男に縋り付く男は、真白い服の中心に深い朱色を携えていた。それはみるみるうちにレースの一糸一糸を辿り、まるで蜘蛛の巣のように入り組んだ繊細なその服を朱く染めていく。
    「永遠の、命を」
     縋り付くキサキの訴えに眉ひとつ、表情ひとつ揺れ動かすことはなく、マイキーはその瞳に被さった瞼をゆるりと持ち上げる。そこから覗く黒曜石のような双眸が自らへ向けられることに、タケミチは言いようのない恐怖を覚えた。あの瞳は空虚だ。空虚が今、己へと向けられている。
     その瞳に見つめられれば、愛おしいあの娘の泣く声がタケミチから遠ざかっていった。空虚に吸い込まれ無へと帰すように。ヒナが泣いているんだ。ヒナが、オレに会いたいと泣いている。行かなければ、いかなければ。そう思うのに、タケミチの身体はマイキーの瞳に捉えられたまま動かない。
    「マイキぃっ!!」
     だがそんなマイキーの瞳が、がくりと大きく揺れ動く。その足元に縋り付くキサキが手繰り寄せるようにしてマイキーの服を掴み、必死にその手を伸ばしていた。まるで空高く輝く星を掴まんとするかのように、指の先までを真っ直ぐに伸ばし、マイキーの瞳を求めていた。
    「オレを選んでくれマイキーっ、オレはダンピールだ……オレは、この繭期を越えることができない」
     キサキが一言言葉を発するたび、その唇の隙間から赤黒い血がゴポリと泡立って流れ落ちる。顎を伝い襟元を汚し、床の上へと滴るそれを見つめ、タケミチは震える喉から声を絞り出した。
    「キサキ!」
    「マイキー頼む、オレを、オマエの永遠の友にしてくれ……、オレに永遠の命をくれ、アイツなんかじゃない、オレに」
     「オマエはオレの憧れなんだ、タケミっち」あの日、そう言ってタケミチへと差し出した手を自らの血で染め上げ、マイキーに向かって手を伸ばすキサキの姿に。タケミチは愕然として言葉を失った。「オマエはオレのヒーローだ」幼き頃のほんの一瞬の記憶を大切に抱き締めて、そう言って微笑んだ顔を苦痛と恐怖、そして憎悪に染めて、キサキは届かぬ星へ手を伸ばす。決して届かぬ、その真黒い輝きを持つ星へ。
    「……キサキ」
     ほとんど吐息をなった声で、キサキの名を呼ぶタケミチ。すると懇願の合間にその声を拾い上げたキサキは赤く血走った眼球をギョロリとタケミチへと向ける。それから何かを囁くようにパクパクとキサキの唇が動かされて、タケミチは「―……え?」とその声に耳を澄ませた。もはや、上階で逃げ惑う吸血種たちの声など耳には入らなかった。
    「……オマエさえ、いなければ」
     囁かれたその言葉は、繭期がもたらす幻聴だったのだろうか。そうであったのならば、どれほど。
    「……キサキ」
     どれほど、良かったか。
     キサキの血濡れた手が床の上に落ちた短剣を拾い上げる。燃え盛る炎の朱を反射させ煌めくその刃は、鋭い切っ先は、タケミチの心臓へと向けられた。短く儚くも懸命に燃え上がるタケミチの命の灯火を抉り取らんとするその刃が自らの頭上にもたらされてなお、タケミチの眼球の裏側にこびり付いた笑顔は消えることはない。
    「これからよろしくな」
     そう言って笑っていたあの日のキサキは、確かに存在していた。幻覚などではなかった。幻覚などではないんだ。だが今、目の前にあるこのキサキの姿もまた、幻覚などではない。それは確かな現実として、振り上げた刃をタケミチに向かって振り下ろす。
    「オマエさえいなければ……ッ!!」
     「オマエがいてくれて良かった」あの日確かにそう言ったその口で、タケミチの命を恨む言葉を吐き出しながら。
    「オマエさえ、オマエさえ……!! いなければ、マイキーはオレを、選んでくれる」
     何度も何度も、刃を振り下ろす。
     その刃先はタケミチの肉を切り裂いて、鮮血をあたり一面に散らした。切りつけらた腕を抱え込むようにして逃げ惑う事しかできぬタケミチは、震える心臓から必死になって声を絞り出す。「キサキ、お願いだ……っ、やめてくれ!」それでも声は届かない。死に怯える哀れなダンピールには、この声は届かない。
     キサキの声が星に届かない事と同じように、星の声もまた、キサキには届かないのだ。
     熱気に舞い上げられ床を汚す煤の上を這い蹲るようにして逃げるタケミチの上に、ふと、影がかかる。タケミチの身体の上に跨るキサキは血に濡れたタケミチの腕を掴み身体を上向けさせると、両手で握った短剣をその心臓目掛けて振り上げた。
    「オマエさえ、いなければ」
     うわ言のようにそう繰り返すキサキの瞳は、死への恐怖で濡れそぼっていた。「じゃあな、オレのヒーロー……」そこから零れ落ちた恐怖のカケラがタケミチの頬へと滴り落ちて、タケミチの中へ恐怖を伝染させていく。
    「ありがとなキサキ、でもダンピールのオレとは一緒にいない方がいい」
    「オレとキサキは友達なんかじゃない」
     そんな言葉を紡ぎ続けたその唇を薄く開く。吐き出す言葉がどれだけの残虐性を持っているのかなど、わかりきっていた。だがタケミチの中に伝染した死への恐怖は、タケミチの身体を内部から突き動かす。
    「―……オレはオマエの、友達だ、キサキ」
     心臓へと突き立てられた切っ先は柔い皮膚の上で動きを止め、タケミチの中へと侵入をしてくることはなかった。キサキの心臓の鼓動をそのまま映したかのようにぶるぶると震えるその手から短剣が滑り落ちて、キサキの身体の重みがタケミチの上からいなくなる。
    「ぁ、あ、ああ、ァァ嗚呼あゝ」
     崩れゆく古城を揺する程の、悲痛な悲鳴が轟いた。その悲鳴はこの場所を取り囲む数多の蔵書たちに吸い取られ、タケミチとマイキーの二人以外に届くことはなく消えていく。
     腹から流れ出る血を止めることもせずに、キサキは再度マイキーへと手を伸ばす。ただそこに佇むだけのマイキーは、その瞳に燃え盛る炎の色を映すことも、恐怖に濡れたキサキの瞳を見やることもない。
    「マイキー……お、ねがいだ、オレに、永遠の命を……っ」
     マイキーの瞳はただ真っ直ぐに、タケミチに向けられたまま。足元のキサキへ落とされることはない。
    「このままじゃオレは、死んで、しまう……マイキー……お願い、だ」

    「キサキ」
     
     吸い込むだけで肺が焼け付いてしまいそうな程に熱された空気の中で、マイキーの声だけはただひたすらに凍てついていた。床の上を這うようなその声は、キサキを取り囲む淀んだ世界に弛み落とされた一筋の蜘蛛の糸だ。触れれば切れてしまいそうな程に儚く細いその糸を手繰り寄せようともがくキサキの指の先で、マイキーは精巧な人形のような指先をその糸に掛け
    「……オマエは、いらねぇんだよ」
     切った。
     その瞬間、キサキの命の灯火は糸と共に切れ、煤で汚れた床の上にキサキの身体が倒れ込む。「キサキ……!!」タケミチの声はもう、友へは届かない。永遠に。
     ようやく、マイキーがその足を一歩前へと進める。マイキーの足の動きに合わせ繊細な刺繍があしらわれた服の裾が踊るように舞い上がった。優美なステップを踏むようにタケミチへと歩み寄ったマイキーは、ふわりと煤を舞い上がらせながらタケミチの傍へと座り込む。それからタケミチの首筋に視線を落とすと、止めどなく血を流し続ける傷口を見つめ、言った。
    「タケミっち、オマエが望むならオレは、オマエを助けてやれる」
     マイキーがその手で差し出す「希望」。それはあまりにも暗い、底の見えない真暗闇の中にある。タケミチはマイキーの両目に嵌る瞳をゆるりとした動きで見つめ返すと、色を失い始めた唇を薄く開いた。
    「望んでくれ、タケミっち、永遠の命を」
    「―……マイキーくん、ありがとう」
    「タケミっち、望むんだ」
    「オレは……永遠の命なんて、いらないよ」
    「……なんで」
     燃え尽きていく、音がする。
    数多の歴史が記された書物たちが炎に焼かれ、燃えて灰になっていく音だ。タケミチはその音に耳を傾け、訪れる終わりを噛み締める。この世に在る全ての物には終わりがある。燃え尽き灰になったとしても、きっといつか誰かがあの書物を蘇らせるだろう。この命とて、同じことだ。例えここで尽きたとしても、いつか輪廻を繰り返しまた産まれる。
    「オレは、ヒナと生きて……ヒナと死ぬんだ、だから」
    「あの人間の女のことか? あの娘ならもう、ダンピールのオマエと逢瀬をしていたことが村人にバレて今頃殺されてる」
    「……そっか、なら、ヒナのところにいかないと」
    「タケミっち」
    「ヒナが寂しがってるから……いかないと、ヒナ」
    「タケミっち……っ!!」
     マイキーの手がタケミチの身体の下に差し込まれ、力を失いつつあるタケミチを持ち上げる。より近くに見えるマイキーの瞳はやはり真黒い輝きを持っていて、タケミチは底知れぬ恐怖を感じた。だが知っている。この瞳は恐ろしいだけではないのだと。
     その奥底には確かに、柔らかで暖かい優しさを内包しているのだと。
    「ごめんね、マイキーくん」
    「嫌だ、タケミっち、オレは」
    「……ありがとう」
    「オレは」
     マイキーの瞳から零れ落ちた雫がタケミチの頬へ着地する。それはキサキと同じ、死への恐怖のカケラだった。だがその恐怖は「自身の死へ」向けられたものではない。タケミチの死へ向けられた恐怖だ。
    「っ……一緒にいて、欲しいんだ」
     瞼を下ろす。タケミチの肩口に顔を埋めたマイキーの瞳から流れ出た涙がタケミチの首筋から流れる血と混ざり合い、その色を薄めていくのがわかった。もう痛みは感じなかった。迫り来る炎の熱も、逃げ惑う若き吸血種たちの声も聞こえない。ただ腕の中にあるマイキーの冷え切った肌の温度と、流れる涙の暖かさだけを感じていた。
    「……嫌だ、逝かないで」
     もう、言葉も出ない。タケミチは自身の死を嘆き悲しむマイキーへ言葉を掛けようと思ったが、その喉は息を通すことも音を発することもできなくなっていた。永遠の時を生きるこの人に、せめて、永遠に消えることのない言葉を贈りたかった。だがその願いを叶えられないまま、タケミチは閉じた瞼の裏で尽きていく己の命を見つめる。
     マイキーは絹糸のようにしなやかな髪をしな垂れ落としたまま、色を失っていくタケミチの頬の上に視線を滑らせる。ぬらりと光る真っ赤な舌先を覗かせるように薄い唇を開き、それから小さな頭をゆらぁりと持ち上げた。
     まるで宝石のように輝く鋭い二本の牙が、獲物に狙いを定めるようにして剥き出しになる。
    「ごめんな……タケミっち」
     マイキーの真っ赤な舌が既に肉の抉れたタケミチの首筋に触れ、その味蕾が芳醇な血の味を感じ取るのと同時に、タケミチの皮膚や血管をブツリと食い破る二本の牙。歯茎にタケミチの肉が触れ合うほどに深くまで牙を食い込ませ、マイキーはタケミチの背を掻き抱いた。
     その瞬間、タケミチは体内に溶けた鉛を流し込まれているかのような苦痛を感じ、閉じていた瞳を見開き枯れていたはずの喉から断末魔にも似た悲鳴を上げた。
    「ゔぁアアアアアああああっ!!!!!!」
     そのあまりの苦痛に両足を蹴り上げ、床を、マイキーの身体を蹴りつけるタケミチ。だがマイキーは決してタケミチの身体を離すことはなく、その首筋に突き立てた牙で、タケミチの中へと流し込み続ける。永遠に解けることのない「呪い」を。
    「ヒっ、ア、ぁ、ぁあああ!?!?」
     やがてタケミチの身体は解放され、床の上に転がるようにしてタケミチは身悶える。床に突っ伏すようにして呻き声を上げるタケミチの身体に付けられた無数の切り傷や、致命傷に至っていた首筋の噛み跡は、まるで夢幻であったかのように塞がり消え始めていた。
     タケミチの瞳が揺れ、そしてその手が自らの身体を掻き毟る。
    「傷が、傷が……ッ!? どうして、そんな、マイキーくん」
    「オレは、」
    「何、したんだよ……オレに、なにをしたんだよっ!?」
    「……タケミっちに死んで欲しくなかったんだ」
    「嫌だ、嘘だこんなの、嘘だ……嘘だぁ!!」
     黒曜石の瞳はタケミチの怒りも悲しみも、恐怖すら全てを吸い取り無に帰していく。ただタケミチの死への恐怖で濡れた瞳をゆるりと優しげに細め、笑う。人形のように精巧で美しく、まるで生の感じられない笑顔だった。
    「あ……ァ、あ……嫌だ、ヒナぁ」
     タケミチの視界に、ギラリと鈍い輝きを放つ短剣が映り込む。考える間も無くそれに飛びついたタケミチは、困惑と恐怖で震える両手で柄を握り、自身の腹へと切っ先を突きつけた。それから声にならない悲鳴を上げ、刃を自身へ突き立てる。予想していた身を裂くような痛みはもたらされなかった。ただただ、肉が裂かれたのだという感覚だけが残る自身の身体に、タケミチは底知れぬ恐怖を感じた。
    「ああ、うそだ、うそだ、嘘だ……っ!!!」
     躊躇いもせずに何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も。自らの腹に、心臓に刃を突き立てた。だが体内から刃先が抜かれた次の瞬間には縫い合わせれるようにして塞がっていく傷口。死への恐怖を忘れた身体。それが意味する事実は、たったひとつ。
    「一緒に生きよう、タケミっち」
    「…………うそだ」
    「オレと、永遠の時を生きよう」
    「永遠、えいえんの……時……ぅぁアアアアアっ!?!?」
     指の先まで滑らかな肌に覆われたその手をタケミチへと差し出すマイキーの笑顔に、タケミチは半狂乱になって刃を振り下ろした。その美しく整えられた顔を裂き、繊細なレースの服を切り刻み、その中に包まれた薄い身体に刃を突き立てる。だがマイキーは床の上に膝を着くことも、痛みに顔を顰めることもない。黒で塗り潰された瞳を三日月のように歪め、タケミチを見つめ続ける。
    「今日からオマエも〝ファルス・オブ・トランプ〟だ」

     それは「永遠の繭期」の、始まりだった。
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    kiiiiiiiiiini

    PROGRESS◇6/26のTOKYO罹破維武 5にて頒布予定
    ◆今回の発行は【前編】となります
    (後編は8月に発行予定)

    ばじふゆ・タケマイ共通のサンプルですが、一つの本に2cpが入っているわけではありません。
    ばじふゆ本→cpは「ばじふゆ」のみ
    タケマイ本→cpは「タケマイ」のみ
    (詳しくはTwitterの【両冊購入予定の方向け注意事項をご確認ください)
    https://twitter.co
    6月新刊サンプル(サンプル前半はTwitter)

    〈 12月20日 〉

     押し込めるようにして乗せられた車の後部座席で、癖まみれの黒髪をビョンビョンと跳ねさせる男――花垣武道はその顔に冷汗を滲ませて引きつった笑みを浮かべていた。
     一方で左側の運転席に座る千冬は、淡い灰色のスーツに身を包み、精錬された男の空気を纏いハンドルに腕を預けている。車内に広がるアンバーグリスの甘いようでほのかにスモーキーな香りは、武道の記憶に残るライムシトラスの香りとは酷く離れたところにあるようで、武道はそわそわと両の手を絡め合わせた。
     千冬の顔色を伺うように、バックミラー越しにチラチラと黒目を動かしては、口を開いて閉じる。そしてまたチラチラと黒目を動かしては、口を開いて閉じる。そんなことを五回も繰り返されれば、千冬の中のナニかは弾けるようにして切れた。
    19137

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