酔生夢死サンタロール白檀のような、青く萌える草のような香りにうなされている
浅い夢を見ていた。最初は砂塵と悪魔たちの跋扈するダアトを。次に消えていく偽りの東京を。そしてあの時取った手が、離れていく、魂ごと剥がされていく苦痛を。
寝汗で張り付く寝衣の不快感が、夢見を最悪にする。スリープモードに入り待機しているアオガミの体表に、マガツヒの赤が暗く光っている。
寮は静かだ。学校が悪魔たちの襲撃に遭い、自宅に帰る生徒もちらほらいた。
あるいは、もはや権能をもたない神のシャカイナ・グローリーが剥がされ、消えていく。 上階の生徒。下階のホールに集って団欒したり勉強をしている下級生。静けさが満ちた自室はさぞかし眠るには快適だろうに、眠りは浅くなるばかりだ。
酔生夢死の、夢だ。
もはや嗅覚にこびりついた血とマガツヒの臭いは薄れることはない。夢の中でだけ香る清浄なるサンタロールに、人間である今はまだ、うなされている。