親友から連絡をもらって、急いで病院に駆けつけた。
ずっと探していた人物が見つかった。その人がこのドアの先にいる。私は目の前のドアを開けた。
ベッドの隣に親友が座っていたが、私はベッドに座っている人物しか目に入らなかった。
「い…生きてる…!」
今までどこ行ってたんですか!とかいきなり行方不明になるな!とか何してやがったんですか!とか、お前を探すために大牙は、スターレスで働き出したんだ!とか言いたいことは、たくさんあったけど、ネコメ先輩の顔を見たら、そんなセリフ達はふっとんだ。
やっと会えた嬉しさ、と無事…ではないが(鯨の骨の下敷きになったらしい)、生きてて良かったという思いの方が強くて、泣きながら、ベッドに座っている彼に抱きついた。
「え…え〜っと、君、誰??見たところ、弟の友達っぽいけど、俺の知り合い?」
何、寝ぼけたこと言ってんだ!と思って、俯いた顔を上げて、先輩の顔を見たら、冗談ではないようだ…本気で困ってる。
私のこと…忘れ…た…。
隣で、「え…ちょ…アニキ…」と狼狽える大牙の声が聞こえた。
今朝ニュースで、『1番大切な人のことを忘れる』とかいう奇病があるとか言ってたな…。
行方不明にはなるわ、鯨の骨の下敷きになるわ、奇病にもなるわ…。あぁ…すごいなこの人。
呆然としてる私を見て、大牙がなんとかフォローをしようとあたふたしていた。
「……すいません。急に泣きつかれたら驚きましたよね。私、大牙くん…あ、いや… くん……弟さんの友人で、せんぱ…、貴方の後輩で、学生時代、すごくお世話になったんです…。」
私が、そういえば、ネコメ先輩はきょとんとした顔で私の顔を見ていた。
大牙が「ちょ…おま…」と私の言ったことに反論しようとしたが、横目でにらんだ。
なにも間違ってはいない。
大牙と友達なことも、ネコメ先輩の後輩だったことも。
そもそも、付き合ってもないし、恋人ともいえない。ってか、告白してないし…。
あー、本当、告白しておけば良かった。そして、振られた方が、まだ気持ち的に良かった。
存在ごと忘れられるとか…神様ひどすぎる……告白のチャンスも与えてくれないなんて…。
「すいません…。知らない相手にこんなことされたら嫌ですよね…。でも、顔が見れて良かった…。ゆっくり休んでください。」
離れよう…いや、もう会わないでおこう。
私のこの気持ちは、なかったことにはできない。でも、この人の前にいるのは辛い…だから、もう、会わないでおこう…。
そう思い、立ち上がってネコメ先輩に縋りついていた手を離した。
「ご迷惑をおかけして、すみません。さよなら。」
そう言って、私は静かに病室から立ち去った。
「ねぇ、今の子、お前の知り合い?」
病室を出て行ったあいつを追いかけようとしたら、飄々とした口調でアニキに話しかけられた。
さすがに、奇病とはいえ、親友が可哀想すぎると思って、文句のひとつでも言おうとしたが、アニキの顔を見てやめた。
「アニキ…なんで泣いてんの…」
「さぁ…」というアニキの顔は苦痛そうに歪んでいた。
とりあえず、この後、大牙に「アニキのこと殴っていいと思う。」とか「奇病のこと調べたんすけど、1番大切な人のこと忘れるらしいって。やっぱり殴っていいと思うっすわー」と言われるオチ。
夢主は、3回くらいネコメに告白しようとして、ネコメに阻止されてる設定。
大牙・ネコメとは、小学生の頃からの幼馴染。
大牙は、スト読んだら、確か途中から離婚してるから、ネコメとの方が付き合い長い。