告白 アンドロイドは紅茶を飲まない。
わかってはいるが、彼女は飲むフリをしてティーカップをソーサーに戻した。
「何か言いたげね、ロジャー」
心を読まれたかのような気持ちでいると、R・ドロシー・ウェインライトはすっと立ち上がり、飲まなかった紅茶をこちらに差し出してきた。
私はその若干ぬるくなった紅茶をひとくち飲むとホッと息を吐いた。
「なにか悩みでもあるみたい」
「……嫌な過去を思い出した」
「過去を失った街で何を思い出すことがあるのかしら」
紅茶を一気に流し込む。渋みが出てきていたのか、喉に少しだけ不快感を残した。
「——交渉人をしていると、情報を集めなければいけない……」
「そうね」
「私は——身体を売って、情報を得たことがあるんだ……」
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