優しい待ちぼうけと小さな棘の話ウルダハに立ち寄った夜、久しぶりに昔の客から急な仕事を持ちかけられた。いい金額だったからノった。そして帰りが遅くなった。ただそれだけの話だった。
連絡を入れれば良かったと気がついたのは既に客と部屋に入った後、ベッドに上がってから。相手の気が下がるような行動をとりたくはなく、結局明け方客から解放されるまでどうにもタイミングがないまま、今に至ってしまった。
後ろめたいとか悪いとか、そんなことは正直全く思っちゃいない。いないのだけれど、どこか今更の連絡も入れにくく、結局何も言わないまま、俺は自宅の扉を静かに開けた。
「……んん…」
玄関に一番近いソファで寝こける男。待っているつもりだったのか部屋着にすらなっていない。
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