薄暗い洞窟の中。人気も無い広い空間に、コツ、コツと足音が響く。太陽の光も届かない洞窟の岩場には、色とりどりの結晶が所々で群生しており、僅かだが道を照らしていた。かつては鉱山として使われていたであろう洞窟には、探鉱者達の“置き土産”が未だ放置されている。作りかけの線路に、整地されていない道。突き刺さったままのピッケルにいくつもの空洞。掘り進める予定だった場所には、ばつ印の看板が立っていた。
何百年と誰も足を踏み入れなくなったその場所に、懐中電灯を片手に我が物顔で歩き出す者が一人。履きなれたブーツで忍ぶこともなく、何かを探すように彷徨いていた。
「・・・・・・」
真っ黒い服装に身を包んだ人物は、探鉱者たちの置き土産を素通りして、その辺に群生している結晶にたどり着く。胸元のポーチから何かを取り出しては、結晶を軽く小刻みに叩いた。男が取り出したのは、小さなノミとハンマーだった。
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