案内された部屋は、L字型のソファーが鎮座する、小さな部屋だった。大人が二人も入室したら、なんだか手狭に思えるくらいの大きさだ。中央にはテーブルがあり、その上にはメニュー表やらなんやらが立てられている。隅の方に置かれたテレビからは、アーティストの紹介映像が流れていた。
「よし! 歌いましょう!」
テレビの傍に備え付けられたデンモクとマイクを手に、私は後から入室してきた独歩さんに声をかけた。今まさに上着をハンガーにかけていた独歩さんは、私の言葉に少しだけ驚いたような顔をしてそれから小さく頷く。
「その、先にどうぞ」
「私が一番で良いんですか……!?」
「それは、だって、お前が来たがってた所だろ。だから……」
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