魈ほた「ということで、お邪魔します!」
「邪魔と思うなら帰ってくれ」
「なんだよー。魈とオイラたちの仲だろ!」
有無を言わさず室内に入ってきた蛍とパイモンに、魈は軽く眉をひそめた。一瞬扉に施錠をすることを考えたが、そうしたら一日中扉をノックされ続ける可能性がある。そうなったら眠るどころの話ではないし、少しでも仮眠が取れなければ、夜の時間帯の業魔退治も難しくなるだろう。眠れる時に眠る、その行為を積み重ねてきたからこそ、魈は今も業魔退治を行うことが出来ているのだ。
「なんていうか、こう、内装が本当に簡素だね。ベッドしかない」
「オイラたちが望舒旅館に泊まった時は、もっとたくさん家具があったような」
蛍とパイモンが室内を軽く見回しながら首を傾げて見せる。魈の借りている一室には、家具らしいものはほとんど無い。あるのはベッドくらいだ。完全に寝る部屋としてしか利用していないため、それ以外の家具はオーナーに言って下げさせたのである。必要ないものを身近に置いておく必要性はない。
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