蛟九+人間高杉(高銀)狐に化かされるとはこのことか。
唇をはまれながら舌先を吸われ、眼前に広がる幼なじみの顔にうっかりほだされそうになりながらも、高杉は左拳を強く握り、
「テメェ誰だ!動物くせーんだよ!この偽物野郎!」
目の前の顔面に叩きつけると、ぎゃんという鳴き声と狐耳と九つの尾が揺れた。
「あの、ほんと調子こいて唇奪ってしまってすみませんでした」
「で、なんなんだテメェは」
「えっと、その見たまんま分かると思うんだけど……妖怪です、はい」
その後顔面を三、四発ほど殴られた妖怪を名乗る男は、頭に生やした獣の耳と尻から垂れた尾をしょんぼりと下げながら、仁王立ちする学生服の少年の前で正座をしていた。
町の外れにある古びた神社だ。
昔に管理するものがいなくなり、人も寄り付かなくなったと聞くが、特別荒れた様子がないのが異様だった。
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