一夜の過ちを犯したことがある話(高銀)実を言うと、俺と高杉は十年と少し前に、一夜の過ちを犯したことがある。
攘夷戦争の最中で、久しぶりに物資が潤っていた時期で、景気づけにとささやかな宴会を開いた夜だった。
明日には散るかもしれない命。
飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ。
踊る阿呆に見る阿呆。そしてもうひとつ飲む阿呆。
俺はともかくとして、高杉もその夜は珍しく酔っていた。
浴びるように酒を飲み、溺れるように理性を溶かした。
縁もたけなわとなった頃合には、二人でもつれるようにして部屋に戻った。
浮ついた心地のままで、敷きっぱなしの布団に転がれば、何を血迷ったか高杉が覆いかぶさってきて、なんと口を吸ってきた。
ははあ、これはどこかのいい仲の女と間違えているな、と悟ったが、まあ俺も随分と酔っていたので、されるがままにしてやった。
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