失恋見舞いのおはなし ピンポーン。
すっかり押し慣れたインターホンの音が室内で鳴り響いて、すぐにぱたぱたと駆け寄る足音が聞こえてくる。その気配に鉄虎が半歩だけうしろに下がれば、それとほぼ同時に目の前の扉が勢いよく開いて、これまたすっかり見慣れた人物が飛び出してきた。
「おっす! よく来てくれたな!」
「ッス! しょぼくれた顔おがみに馳せ参じたッスよ~」
「く……う~なぐも~~~」
「はいはい、ほら、いつものやつ買ってきたッスから」
途端に、眉を八の字にしてしょぼくれた表情になる守沢を口でなだめながら、慣れた手つきでその脇をするりと抜ける。おじゃまするッスよ~、とこれまたいつもと同じやり取りを交わしつつ、勝手知ったる彼の部屋の中にあがりこんだ。
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