鳴神がなくても『鳴神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ』
ピピピ、と意識の外から聞こえてきた音に、鋼はぱちりと目を開ける。ぼやける視界にまばたきを何度かしながら、音の出どころへ無造作に手を伸ばした。手探りで携帯のアラームを止め、そのまま引き寄せて画面を覗く。煌々と明るい携帯の画面に一度眉を寄せて、それから目をこすった。
時刻は朝の六時半だった。いつものアラーム通りの起床時間。何も問題はなかったが、ただ一つ言うならば、今日は平日ではなく休日だった。
「……アラーム消すの忘れてた」
鋼は携帯を持ったまま手を投げ出し、もう一度目を閉じる。昨日は日付けが変わるごろまで防衛任務だった。日曜日は久しぶりにゆっくり眠ろうとそう思っていたのに。
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