ヒペリカム(仮)貿易に訪れた自国の面々に明るく振舞ってくれる店々、響く製鉄のキン…と水辺に通る音、過程によって出る炎を吹き逃す煙突のぼうぼうという音。初めてカムラを訪れた時は賑やかなざわめきに満たされていたな、とロイは二階部屋の窓から外を見やった。
現在は百竜夜行の影響でひっそりとしているが、花の香りをのせてくる風の音、水のちゃぷんと跳ねる音が聞こえてくる今の里も改めて綺麗な場所だと再認識させられる。それに里の人たちの張りのある声と製鉄の響く音達は昔のまま変わっていない。直に人々の賑やかさも戻ってくるのだろう。
あのヌシ・リオレウスの襲来から十数日が経過していた。里前を守る最後の砦にロイが到着した時には報告の違いに反応が遅れた砦の面々も瞬時に隊形を組み直し、迎撃の火を放っていた。
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