ALL 至真 鶴獅子 犬辻 蘭榎 アイムDONE犬飼先輩が喫煙してる犬辻。犬飼先輩は、大学生になって早々に煙草を吸い始めた。「……先輩、まだ未成年ですよね?」「やだな~辻ちゃん、おれこないだ誕生日だったじゃん」「いや……それでもまだ十九歳ですよね」成人した証拠も無いのに一体どうやって買ってるんだ、という疑問はきっとこの人には通用しないのだろう。不真面目な未成年の代わりに手に入れてくれる不道徳な知り合いがごろごろいるに決まっている。事実、俺が吸い始めたことに気付いて一週間も経たない内に、それまで使っていた蛍光色の安っぽいライターすら銀色の重たくて立派なものに変わっていて、何ですかコレとツッコめば、ただ一言、『もらった』とだけ返された。それが犬飼先輩にとっての当たり前であるかのように。犬飼先輩は市立大学への進学が確定するのとほとんど同時に春からの住居先を探し出し、二月の末にはもうすっかり荷物の移動までを済ませていた。進学をきっかけに一人暮らしを始める学生たちは他に多数いたけれど、誰よりも素早い行動だったことだろう。それを、本人だけがすっきりしたような晴れやかな顔。姉ちゃんたちのことは嫌いじゃないけど、でもやっぱ弟ってキュークツなものだ 2850 アイムDOODLE鳩原先輩の失踪をきっかけに、もしかしたら次は犬飼先輩かもしれない……という疑心暗鬼に捕らわれたために二宮さんが一人暮らししているマンションに逃げ込むようになった辻ちゃんと、二宮さんにそれを聞かされ『二人でナニしてるんですか!?』と動揺せずにいられない犬飼先輩の犬飼side(犬辻)月に一度のペースで辻がうちに泊まりに来る。と二宮さんにカミングアウトされた時のおれの気持ちがわかるだろうか。衝撃のあまり頭は真っ白になり、どうしてそんな告白が飛び出たのかという直前までの話すら吹き飛んで忘れてしまうほどだった。そのくせ口だけは普段通りにぺらぺらとよく回る。矢継ぎ早に問い質さずにはいられなかった。毎月泊まってるんですか?そうだな。二宮さんが一人暮らししてるマンションの方ですよね?あぁ。どっどこで寝てるんですか、辻ちゃんは。辻が床でいいと言い張るから、家で使っていない布団を引き取ってある。二宮さんって太刀川さんとか泊めるの嫌がってませんでしたっけ。当然だ。太刀川と辻を一緒にするな。突っ込めば突っ込むほどに、嘘みたいな話は真実味を増してゆく。まさかあの辻ちゃんが二宮さんにそんな甘え方をするとは、と驚けばいいのか、それとも、あの二宮さんがそこまで辻ちゃんに優しかったなんて、と驚くべきなのか。動揺一つ抑え込めずに、引っくり返った声のまま尚のこと訊いてしまう。「いつから二人でそんなことしてるんですか。おれ初めて聞きましたよ、辻ちゃんが二宮さんとこ 3744 1