つるくり文心地の良い昼下がり。
内番もなく出陣や遠征もない。非番の日は退屈だ。
普段誰も立ち入る事の無い蔵の裏手、木々が生い茂り日陰となっている静かな場所で、大倶利伽羅は自身である刀を抜く。
刀身に刻まれた竜を撫で、ふ、と息を吐く。
静かに構え、刀を振り上げる。
ヒュン、と刃は虚空を断ち切るように閃いた。
誰もいない、静かな場所にただ一振り。
大倶利伽羅にとってそれは心休まるものだ。
だが、一振りの時間を心地よく過ごしている時に限ってやってくるのだ、やつは。
チラリと浮かんだ白い影。ダメだ想像していたら本当に来そうだ。
振り払うように一閃、刃を振り抜き鞘へ収めた。
「わっっ!!」
突然、背後から白い手が伸びる。
ガッチリと首に回された白い両手に引かれるように少しばかり仰け反る体勢にさせられた。
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