小ネタ--
騎空団で受けた簡単な依頼を、エルモートがひとりでこなした帰り道だった。
ふと視線の先に石畳を歩む男の足が映る。このまま進むとぶつかってしまう。郊外でひとけが少ないとはいえ、往来でのことだったので、エルモートは違和感を覚えることなく歩みを横にずらした。しかし、すぐにまた別の男とぶつかりそうになり、ようやくエルモートは顔を上げた。明らかなチョッカイに、「面倒くせェな」と口の中で呟く。
いかにも風体の悪い男が三人、こちらを囲むように寄ってくる。
「よう、兄ちゃん」
金品を巻き上げるカツ上げの類が脳裏を過る。男の一人が暗い路地を顎で示す。
「ちょっとお話いいかい?」
「よかねェよ」
エルモートはするりと三人の間をすり抜けた。悪漢たちはあっと驚いた顔をする。たいした輩ではなさそうだと踏んで、エルモートはこのまま走れば逃げきれそうだと考えた。しかし、その瞬間、まったく気配のなかったところから男の手が伸びてきてエルモートの腕を掴んだ。同時に行く先を遮るように逞しい身体が立ち塞がった。
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