爆弾 おれがその人と会ったのは、盆祭りの日だった。
暮れの残照は田舎の山に映え、東からは温い夜がその色を侵食し始めている。
ふもとの通りには、屋台が所狭しと並んでいた。客寄せに声を上げる店主、好き好きに見てまわる通行人。一帯は熱を帯びたように活気だっていて、適当に店を見てまわるつもりでいたおれも、気がそぞろだった。
それでも、そんな気持ちは最初だけで、結局通りから抜けるのに三分と掛らなかった。花が萎むように、興奮は困惑に変わる。ふだん人との接触を避けている身が、人波をうまく泳げるわけがなかった。
おれはのろのろと少し離れた外灯の近くにしゃがみ込み、今しがた抜けて来たほうを見る。ソケットの幻想染みた灯りが夕闇にぼんやりと浮き上がり、足元では幽霊みたいな影が通行人にじゃれついている。皆が皆楽しそうにしている中、自分の足だけは重たげだ。
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