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    松島 月彦

    なんかやべぇ奴

    ☆yên lặng theo dõi
    POIPOI 11

    松島 月彦

    vẽ nguệch ngoạc聖夜に星満たす宵闇の話普段は寮や下宿先から通学している学友たちも大抵、ホリデー期間は家族の顔を見に実家へと帰ってしまう。ほとんどの者はそこで幸福なクリスマスを過ごすのだ。
     ボクとて、スマートフォンのメッセージアプリに「今年は帰ってこないの?」という旨の問いかけが届かなかったわけではない。だけどどうしても帰る気にはなれなかった。地元に帰ったところで、もうボクが「顔を見られる」家族も友人も一人として存在しないのだ。
     事故に遭って以来、一目で相手を判別できなかったが故にまるでボクが失礼極まりない人間であるかのような扱いを受ける機会はたくさんあった。そしてそのことに息苦しさや怒りを感じつつ、同時に一種の罪悪感めいたものを覚えていたことも事実だ。だからちょっと迷ってから「ごめん、バイトがあるから」と返信した後に同じ足ならぬ同じ指で「ホリデー期間はお店開いてないの? 開いてるならシフト入れてほしい」とアポストロスにメッセージを送ったのは、ここだけの話。

     ボクが今日──つまりはクリスマス・イヴ──に“アルビオン”の片隅で真鍮の額縁をせっせと磨いているのは、まあ、そういう理由だ。

    「……ふう。だいぶキレイになった 8349

    松島 月彦

    vẽ nguệch ngoạc遊園地に行った話「これ乗りたい!」
     フィンレイが一つのアトラクションの前で足を止める。飛行機を模したゴンドラが上下に動きながら垂直軸の周りを回転する遊具のようだ。メリーゴーラウンドが宙ぶらりんになったもの、といったところか。
     飛行機を模しているというのが気になって、車椅子のハンドルを握るボクの手に汗が滲む。エリサも同じようなことを考えたらしく、彼女が横目でアポストロスの顔を窺ったのが分かった。恐らく、フィンレイは三年前の事故のことを知らないのだ。
     しかし緊張するボクらを余所に、アポストロスは意外にも乗り気な様子で「ああ、一緒に乗るとしよう」と返事をした。
    「今度はオレがアポストロスの隣な!」
     胸を撫で下ろしたのも束の間、フィンレイがそんなことを言う。横目同士でエリサと目が合った。フィンレイがアポストロスと同じゴンドラに乗るのであれば、必然、ボクはエリサと同じゴンドラに乗ることとなる。
     正直にいうと、エリサのことは少し苦手だった。人の表情が分からないボクにとって、声は貴重な情報源だ。しかし彼女の声はいつでも完璧に作り込まれており、その本心は消して窺い知ることができない。
     そうでなくとも、ボク 2400

    松島 月彦

    vẽ nguệch ngoạc幸福な日の話「……今日は天気が良い」
     アポストロスが窓際に車椅子を寄せながら呟いた。やはり表情は分からないが、穏やかな声音をしている。
     ボクに認識できないだけでサンドラには彼の表情が見えているのだと思うと、ほんの少しだけ羨ましい──そんなことをぼんやり考えていると、サンドラが振り返った。
    「本当に良いお天気ね。せっかくだから外でお茶にしましょうよ」
     ボクがアポストロスの車椅子を押し、サンドラは日傘を差しながらカフェテリアに向かって歩いた。五月の陽光が細かな粒子となって街中に降り注ぎ、ときおり吹くそよ風がコブシやミズキの花を優しく揺らした。世界は祝福に満ちていた。
    「……世界がこんなに明るいなんて知らなかった」
    「あらゼノンちゃん、詩人ね」
    「からかわないでくれるかい?」
    「褒め言葉よ」
     サンドラの唇が弧を描き、どうやら彼女が微笑んだらしいということが分かる。
    「然り」
    「アポストロスまで……」
     彼の声は何処か楽しげだった。

     また一つ、ノートに幸福な書き込みが増える。
     あの日病室で感じた絶望は、いつの間にか溶けてなくなっていた。ボクは決して世界に見捨てられた存在などではなかったのだ。 500

    松島 月彦

    vẽ nguệch ngoạc過去を求めてみた話丁度サンドラが昼休みに入るタイミングを見計らい、病院の食堂で彼女を待った。彼女がここで昼食を取るとは限らないし、たとえ彼女がやってきたとしても人の顔が認識できないボクの方から彼女を見つけるのは難しい。分かってはいたが、いてもたってもいられなかった。
    「あら? ゼノンちゃん?」
     辺りを見渡すボクに、誰かが声を掛ける。
    「……サンドラ……?」
     薄翠の長い髪に白衣と、落ち着いた声音。それからボクへの呼びかけ方。今回に関していえば多分正解だと思うが、やはり出会い頭に人の名を呼ぶときはいつも不安になる。
    「ええ、どうしたの? 今日は通院日じゃないわよね?」
     間違えなくて良かった──密かにホッとしつつ、ボクは単刀直入に用件を切り出した。
    「……アポストロスについて教えてほしいんだ。彼がどういう経緯で中途障害を負ったのか」
    「それは……、」
     ボクにサンドラの表情は分からない。それでも何となく、彼女が困惑しているような雰囲気は伝わってきた。
    「……ダメよ、『医者』が『患者』に他の患者の情報を無断で教えることはできないわ。だけど──」
     辺りを憚るようにして、サンドラが少し声を低くする。
    「── 1951