サーの襟足を触るのが好きなオルの話。 髪を切った日の翌朝は、オールマイトを出迎えるのが少し気恥ずかしい。髪型が似合う、似合わないの問題じゃあない。スタイルなど、一年中変えることはない。
私の仕事場には、――正確には、雇用主には――少し変わった習慣があるからだ。
「おはよう、ナイトアイ。あ、髪切ったんだ」
執務室のドアが開かれると、こちらが挨拶を返すよりも先に話題を振られた。入口からデスクまではそこそこ距離があるのに、毎回よく判別できるものだと舌を巻く。
「おはよう、オールマイト。さっそくだが今日の撮影の件で……」
席を立ち、タブレットでスケジュールを表示する。本日のプロモーションは三件。ヒーロー業務に支障がないよう十分余裕を設けてはいるが、効率的に消化しておきたい。事前の打ち合わせは必須だ。
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